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東京路地裏横丁
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山口昌弘
著
- 書籍:¥1,800(税別)
- 電子書籍:¥1,440(税別)
- 四六判・並製/224ページ
- ISBN978-4-484-15215-8 C0095
- 2015.9発行
ノスタルジックでありながら、いま若者や外国人観光客に大人気の「横丁酒場」の写真が満載! 2020年東京五輪が決まり、再開発などで今後消えていく運命にある(?)路地裏横丁の懐かしい景観を約200点のモノクロ写真で紹介。菊池裕氏の短歌収載。
内容
昭和の面影を色濃く残す東京の路地裏・横丁の懐かしい景観を封じ込めた1冊。新宿ゴールデン街、渋谷のんべい横丁、吉祥寺ハーモニカ横丁、武蔵小山駅前路地裏飲食街、立石呑んべ横丁……
おもに戦後生まれたとされる東京の「路地裏」と呼ばれる狭い通路や横丁の飲み屋街。ノスタルジーを感じずにはいられないこれら路地裏の風景を、約200点ものモノクロ写真と情感あふれる短歌で構成した永久保存版。
本書掲載の路地裏横丁
新宿 ゴールデン街新宿 思い出横丁
新宿 思い出の抜け道
渋谷 のんべい横丁
三軒茶屋 三角地帯周辺
吉祥寺 ハーモニカ横丁
西荻窪 南口駅前と柳小路
自由が丘 自由が丘横丁と駅周辺
武蔵小山 駅前路地裏飲食街
神楽坂 かくれんぼ横丁とその周辺
大森 山王小路飲食店街(地獄谷)
銀座 路地裏小路
神田 今川小路
立石 呑んべ横丁
撮影後記
今から十数年前に「東京路地裏写真館」というタイトルで、東京の路地裏を写真と短い文で紹介する連載を五年間ほど続けていたことがある。都心の繁華街のすぐ裏手にも、昔ながらの板張りの家が軒を並べているところも多かった。とくに狭い路地では人がすれ違うのもやっとで、もっぱら出逢うのは野良猫だった。そんな光景に懐かしさを覚え、路地裏散歩をする感覚で写真を撮っていた。しかし現在、その当時のまま残っている路地裏はごく僅かで、大半が取り壊され、マンションや駐車場に変わっている。狭い路地も道幅が広がり、猫の代わりに車が通るようになり、おちおち散歩もできない場所となった。まさに味気ない殺風景な町並みに移り変わっていく。
本書の写真は、路地裏の中でも、お店が多く集まる横丁や小路を中心に新たに撮り下ろしたもので、掲載された場所は東京に数多く残る横丁のほんの一部に過ぎないことも明記しておきたい。
東京の路地裏横丁は戦後まもなく、焼け野原となった場所に闇市や屋台などの小さなお店が重なるように集まってできたところが多い。渋谷のんべい横丁で六〇年、お店をやっている女将さんに話を聞くと、当時この辺りは一面野原で雑草が生い茂っていて、その場所に屋台と同じ広さの三坪ほどの小さなお店を、くじ引きであてがわれたそうだ。戦後の何もない時代に人々の憩いの場として生まれたのが路地裏横丁なのである。まさに昭和の面影を今に残す横丁だが、再開発により年々その姿を消している。二〇二〇年の東京オリンピック開催に向けて、今後ますます再開発が進むと予想されるが、その時、ここに収められた路地裏横丁がどれだけ残っているのか心配である。
一方で、近年、外国からの観光客の観光スポットとなり、再び横丁が賑わいを見せている。世代や国籍に関係なく、狭いお店で肩をふれあいながら一緒に飲んでいると、偶然居合わせた者同士に会話が生まれ、時には友達になってしまう。そんな日本的横丁感覚が今や新鮮なのかもしれない。
隣近所でも話もしない時代にあって、路地裏横丁は狭くても、ほど良い貴重な空間なのである。
本書を制作するにあたって、企画の段階からお世話になった書籍編集部の鶴田寛之氏、写真に短歌を添えるという初めての試みに快く賛同してくださった菊池裕氏にはとくに感謝したい。写真に合わせて書かれた短歌でもなく、短歌に合わせて撮った写真でもなかったが、結果として菊池氏の短歌が写真に別の奥行きを与えてくれたように思う。
そして最後に、東京路地裏横丁で出逢った多くの方々に心からお礼を申し上げたい。
二〇一五年九月 山口昌弘
略歴
山口昌弘(やまぐち・まさひろ)武蔵野美術大学造形学部芸能デザイン学科卒業。デザイン制作会社を経て、1989 年MOUNTAIN, INC.を設立し現在に至る。写真の他、書籍の装幀、アートディレクション、絵画制作等ジャンルにとらわれず幅広い分野で活動する。書籍装幀の分野では、開高健、村上龍、吉本ばなな、鷺沢萠、角田光代、横内謙介、吉元由実、曽野綾子各氏の他、数多くの書籍を手がけている。著書に『Puku-Puku Islands』『ジャマイカン・ブルー』『夢をみる言葉』『世界のパワースポット 元気が出る言葉』『気持ちが楽になる禅の言葉』等がある。
http://www.yahman.net/