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なぜ女は男のように自信をもてないのか
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なぜ女は男のように自信をもてないのか

なぜ女は男のように自信をもてないのか

女性たちは「努力は報われるもの」と信じてきたが、いまだ自信が持てない状況にあるのはなぜか。第一線で活躍する女性たちへの取材とともに、男女の自信の差を明らかにした研究や著者の遺伝子検査の結果も公開。アメリカで「自信」論争の発端となった一冊。ニューヨークタイムズ・ベストセラー!

  • 書籍:定価1980円(本体1,800円)
  • 電子書籍:定価1584円(本体1,440円)
  • 2015.05.28発行
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内容

シェリル・サンドバーグも、ヒラリー・クリントンも、
メルケル独首相も、IMF専務理事ラガルドも……
成功しているのに、自信がないって本当?

心理学、脳科学、遺伝子検査などから、能力があっても強気になれない女性の姿が明らかになる!

たとえば……
●女性は自信がないことで、給料が男性より30%も低い。
●数学のテストの前に性別を聞かれただけで、女性は無意識のうちに出来が悪くなる。
●遺伝子で自信のあるなしが決まる。

アメリカで物議を醸した「自信」論争の発端となった一冊。
ニューヨークタイムズ・ベストセラー!

ケイとシップマンは、女性が成功するために「自信」が果たす重要な役割に、鋭い光をあてた。二人は私たち皆に役立つアドバイスと、より希望のもてる未来のヴィジョンを提供してくれる。
――シェリル・サンドバーグ(フェイスブックCOO、『リーン・イン』著者)

目次

序文

第1章 不安から逃れられない女性たち

第2章 考えすぎて動けない女性たち

第3章 女性は生まれつき自信がないのか?

第4章 男女間に自信の差が生まれる理由

第5章 自信は身につけられるもの?

第6章 自信を自分のものにするための戦略

第7章 部下や子どもに自信をもたせるには

第8章 自信の科学

序文

 ある種の人々を特別な存在にしている性質がある。説明するのは難しいが、すぐにそれとわかる素質。その素質をもっていれば世界を手に入れることも可能だ。だが、もっていないと、自分の可能性の最初の入り口でひっかかったまま、一生を終えることになる。
 
 二十八歳のスーザンがその素質を十二分にもっているのは明らかだった。だが、ほとんどの人と同じように、彼女も人前に出て話すのは苦手だった。皆に伝えたいことはたくさんある――でも、スポットライトを浴びるのはいやだった。講演の前は、聴衆に馬鹿にされるのが怖くて心配で眠れないと、友人に打ち明けたこともある。最初のころの講演は散々だった。それでも彼女は努力を続けた。何枚ものメモで武装し、良識的な服で身を守り、自分の不安と闘い続けた。そして、懐疑的な目で彼女を見る男性の聴衆を前に、大きな物議を醸すメッセージを発し続けたのだ。スーザンは、自分の使命を果たすためには、自身の恐怖を克服しなければならないとわかっていた。だから彼女はそうした。そしていつしか、とても説得力のある講演者になっていた。

 スーザン・B・アンソニー。アメリカの女性参政権運動の指導者は、女性の参政権を勝ち取るために五十年の努力を続けた。そして一九〇六年、自分が成し遂げたことを目にする十四年も前に、この世を去った。だが彼女は最後まで、自分の弱さにも、常に勝利が手の届かないところにあるという事実にも、足を引っ張られることはなかった。
 
 現代のパキスタンの少女たちには、毎日学校に通うだけでも、その素質が必要だ。わずか十二歳で、自分たちの教育環境の改善を求めてタリバンに立ち向かい、すぐそばで学校が破壊されていくなか、そのことを世界に訴え続ける少女の姿を想像してみてほしい。絶対にその素質が必要だ。それもかなり抜きん出たものが必要だろう――十四歳にして、バスのなかで過激派に頭を撃たれて死の淵をさまよったにもかかわらず、さらに世界中をまわって大義のために闘い続けるには。マララ・ユスフザイにまず「勇気」があるのは確かだ。タリバンが犯行声明を、さらに続けて殺害予告を出したときも、彼女は瞬きもせずに言った。「その場面を、いつも鮮明に思い描いています。たとえ彼らが私を殺しにきても、私は、彼らがやろうとしていることは間違っていると、教育を受けることは私たちの基本的な権利なのだと訴えます」

 だが、マララのエネルギーになっているのは「勇気」だけではない。彼女の抵抗の精神の燃料となり、運動を着実に前進させる「何か」があった。たとえどんなに状況が不利であっても、大きな岩が目の前に立ちはだかっていても、マララは、「自分には絶対にできる」という驚くほどの信念を内に秘めていた。
 
 この二人の女性は一世紀も離れた時代を生きているが、ある共通の信念によって結ばれている――やると決めた目標は必ず達成できるという思い。そう、彼女たちに共通しているのは「自信」だ。必要不可欠と言ってもいいほどに重要なものだが、驚くほど多くの女性に欠けているもの。
 
 その「自信」というものの捉えにくい性質は、二〇〇八年に『ウーマノミクス』(アルファポリス刊)という本の執筆を始めて以来、ずっと私たち、キャティーとクレアの興味を惹きつ
けてきた。当初、私たちは、女性にとっての前向きな変化に気を取られていた。近年、企業にとって女性たちがどれほど価値があるかというすばらしいデータや、生活のバランスをとりつつ、仕事でも成功できる女性のパワーについて詳しく書き記すことに忙しかったのだ。だが、取材で何十人もの実績のある女性たちと話をするうちに、なんとも説明のつかない暗い穴にたびたび気づくようになった。なぜ大きな成功を収めている投資銀行家が、「この昇進に自分は値しない」などと言うのだろう。業界で女性のパイオニアとして何十年も活躍してきたエンジニアが、次の新しい大きなプロジェクトを担当するのが本当に自分でいいのかどうかわからないと、ぽつりと漏らしたりするのはなぜ?

 私たちは、ここ二十年ほどアメリカ政治を取材してきて、国内で最も影響力のある女性たちにも何度かインタビューしたことがある。また、職業柄、皆が「きっと自信に満ちあふれているに違いない」と思っているような人々に出会うことも多々ある。しかし、別の視点をもって調べてみると、この国の権力が集まるところは、女性の「自己不信地帯」でもあるということが見えてきて、かなり驚いた。議員からCEOまで、女性という女性が、自分にはトップに立つ資格がないのではないかという説明のつかない不安を、様々な表現で伝えてきたのだ。私たちが話をしたすばらしく有能な女性たちの多くが、ある種の図太さや、自分の能力に対する揺るぎない自信に欠けているように見えた。自分たちが恥ずかしいと思っている「弱さ」を露呈しかねないという理由で、このテーマ自体に居心地の悪さを感じる女性たちもいた。力のある女性たちでさえそんなふうに感じているのだとしたら、私たちのような普通の人間が日々どう感じているかは、想像に難くないだろう。
 
 そして、あなた自身もその感覚は知っているはずだ。自分の発言が、ばかばかしく聞こえるかもしれない、もしくは自慢しているように聞こえるかもしれないという恐れ。自分の成功は期待されていないし、それどころか分不相応だと思われているのではないかという感覚。居心地のいい場所から踏み出して、わくわくするけれども難しいリスクのあることに挑戦するときの不安。

(略)

略歴

[著者]
キャティー・ケイ Katty Kay

BBC ワールドニュースアメリカのワシントン支局リポーター。NBC の報道番組ミート・ザ・プレスと、MSNBC(NBC とマイクロソフトが共同で設立したニュース専門放送局)のモーニング・ジョーにも出演している。現在はワシントンDC で夫と四人の子どもと暮らす。
 
クレア・シップマン Claire Shipman
ABC ニュースおよび、グッド・モーニング・アメリカ(ABCの朝の報道番組)の特派員で、政治、国際関係、女性向けニュースを担当する。ワシントンDC で夫と二人の子ども、そしてやっ
てきたばかりの子犬とともに暮らす。

 

[訳者]
田坂苑子(たさか そのこ)

茨城県生まれ。慶應義塾大学環境情報学部卒。十年の出版社勤務を経て、フリーランスに。主に書籍の編集及び翻訳に携わる。

装丁/長坂勇司
校閲/円水社