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賢いやめ方 人生の転機を乗り切る「目標離脱」の方法

賢いやめ方
アラン・バーンスタイン/ペグ・ストリープ 共著
矢沢聖子 訳
  • 書籍:¥1,800(税別)
  • 電子書籍:¥1,440(税別)
  • 四六判・並製/320ページ
  • ISBN978-4-484-15111-3 C0030
  • 2015.03発行
仕事、恋愛、人間関係……これまで一生懸命打ち込んではきたけれど、実現の見込みのないことや、実現してももう心が躍らなくなったことにどう見切りをつけ、気持ちを切り替えるか? 心理学・脳科学に基づいた「賢明なやめ方」ガイドブック。
 

書籍

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電子書籍

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内容

「やればできる」「一度始めたことは途中で投げ出すな」はいつも正しいわけではありません。人生の転機を迎えた時、自分ではどうすることもできない目標や、やる気を失ってしまった目標にどう見切りをつけ、気持ちを切り替えるか?
本書では、それまでの目標にとらわれずに自分を解放し、もっと幸せになれる新しい目標を見つける一連のプロセスである「目標離脱」の方法について詳説します。
 
本当になりたい自分を冷静に判断し、納得のいく意思決定をするために。周囲の目や他人の評価ではなく、自分自身が幸せでいられる時間を最大化するために。
「やめる力」は「幸せになる生き方」のために必要な条件です。

「やめるべきこと」をきっぱりやめ、「さっさと次に行ける」ようになる本。

序――「やればできる」という神話 より

 本書『賢いやめ方』の前提となる考え方は、世間一般の常識に反している。アメリカ社会ではなにかを途中でやめるのは否定的にしかとらえられないからだ。実際、一般に受け入れられ支持されているやめ方といえば、喫煙や飲酒といった悪習慣を断つ場合だけだ。だが、この本のテーマはそうしたことではない。
 この本で提唱するのは、やめる力はがんばることや楽観的な考え方と同じように大切で、がんばりや楽観とバランスをとるのに必要だということである。やめる力を身につけるのはとても重要だ。これからみていくように、人間は実現できない目標でもがんばり続けるようにできているからだ。やめることができたら、実現不能なことに執着せずにすむばかりか、充実感をもたらしてくれる新しい目標に取り組める。やめることを覚えて私たちの脳に組み込まれた思考習慣を意識的に変えていかないかぎり、幸福を感じられないまま困難な道を無意識のうちに邁進することになるだろう。
 やめるのはそれ自体が目的ではない。やめるのは、目標を見直し、人生になにを求めているか再確認するための第一歩だ。あなたがこの本を読んで、やめることに対する考え方を変え、実現不可能な目標を断念したり、もはや満足感を得られなくなった目標を見直したりしてくれることを願っている。なにがなんでもやり抜くのを美徳とする文化にどう対処すればいいかも読み進むうちにわかるはずである。

 やめることでバランスをとる

 子供向けアニメーション「リトル・エンジン」(ちいさなきかんしゃ)の「やればできる、やればできる」という掛け声を聞きながら眠りについたアメリカ人は少なくないだろう。あの番組は、がんばってポジティブな考え方をすれば成功できると子供たちに教えている。こうして、小さな子供のころから、「簡単に諦める人はぜったい勝てないし、勝つ人はぜったい諦めない」という格言を繰り返し聞かされ、困難を乗り越えて最後までがんばるのがいいことだと叩き込まれるのだ。

(中略)

 たしかに、そう考えると勇気が出る。こういう話はお守りのようなものだろう。スティーヴン・キングは持ち込んだ原稿を三〇回も突き返され、出版にこぎつけられなかった小説が四作ある。スティーブ・ジョブズはネクスト社のコンピューターでさんざんな目に遭った。こうした例は枚挙にいとまがない。そして、私たちは「やればできる」と呪文のように繰り返し、「うまくいかなくても何度でも挑戦しよう」と自分を叱咤激励しつづける。
 がんばるのはいいことだと信じているから、自分の経験を語るときも、聞いた話から教訓を引き出すときも、この信念に基づいて考える。それ以外の考え方ができない。
 しかし、ひとつ問題がある。ロッキーが階段を駆け上がるのを何度見たところで、がんばっただけで成功するとは限らないのだ。実際、がんばることばかり考えていると、大局的な物の見方ができなくなってしまう。人間の脳はがんばるようにできているうえ、私たちは可能性がなくても真剣に取り組むという思考習慣を持っているからだ。
 その結果、目標を達成できるかどうか予測するとき、私たちは楽観的になりすぎる傾向があり、場合によっては、希望的観測に陥る。要するに、目標を実現できるかどうか判断するのがあまり得意ではないのだ。そのうえ、実現した目標から満足感を得られなくなっても、思考習慣とやめることの後ろめたさに引きずられて一歩踏み出すことができない。がんばっているから、目標を実現できなくてもきっぱりやめられず、新たな目標を見つけることもできないわけだ。
 きっぱりやめる力は、がんばるのと同じぐらい貴重なツールである。
 やめることの価値を受け入れるのは抵抗があるかもしれない。愚かで破滅的な考え方だと思う人もいるだろう。途中でやめるのは意志が弱いからで、そういう人は敗者だと私たちは教えられてきた。
 しかし、ここで断言しておこう。成功をおさめ人生に満足している人は、がんばることとやめることを両方とも知っている。ただし、ただやめるのではなく、自分の意思で賢明にやめる。
 たとえ世間の常識に反していても、やめ方とやめ時を知ることは人生の重要なスキルである。決して、不面目な最後の手段ではないのだ。やめることを検討するだけでも、これまで気づかなかった物の見方ができるようになる。がんばるほうに傾いている脳の働きを調整することもできる。さらには、賢いやめ方を考えていく過程で、私たちが無意識のうちに意思決定していることや、意識的な決定をするにはどうすればいいか、理解できるだろう。
 本書は認知心理学、行動心理学などさまざまな分野の心理学や脳科学に基づいている。やめることを習得できる技術としてとらえ、やめる力とがんばる力をバランスよく身につけてもらうこと、満足できる意思決定をして充実した人生を送ってもらうことが本書の目的だ。あなたがゆきづまっていたら、そこから抜け出すヒントになるはずである。目標を立て直し新たな可能性を探るには、執着してきた目標をきっぱりやめるしかないのだから。

(中略)

 賢くやめることを心理学の専門用語では「目標離脱」というが、これは単独の行為ではなく相関性のある一連のプロセスである。「目標離脱」の意味と意義、つまり、やめることのできる人ができない人より人生に幸せと満足を感じている理由は、広範な研究の対象となってきたが、世間に広く伝えられることはあまりなかった。幸せは単なる抽象的な概念ではない。実現不可能な目標を追い求めた結果、人生の幸せを得られなかったばかりか、病気になる場合もある。
 「目標離脱」は、「もう限界だ!」と尻尾を巻くのとは違う。やり抜く気力のない意気地のない行為でもない。
 本書はあらゆるレベルで実行できる賢明なやめ方のガイドブックである。あなたの考え方、感じ方、行動がきっと変わる。正しく実行すれば、やめることで新たな目標が生まれ、新たな可能性が広がるだろう。

目次

序――「やればできる」という神話
 やめることでバランスをとる

第1章――がんばる心理
 著者たちの場合/投げ出す人/がんばらなければというプレッシャー
 がんばらせる脳/あと一歩/聞いた話で判断する/間歇強化の法則
 大変だからがんばる心理/埋没費用の誤り/手中の鳥
 手に入らないものほど価値がある/シロクマのことは考えるな
 子供時代の体験/がんばりはきくが融通がきかない/採算の合うやめ方
 ●あなたのがんばり度チェック

第2章――ダメなやめ方
 投げ出す/OK牧場/やめたつもり/やめると脅す/雲隠れ
 ビッグバン/中途半端にやめる/なぜこういうやめ方はダメなのか?
 立ちはだかる障害/少し説明を/目標が対立するとき

第3章――やめる技術
 認識を変える/感じ方を変える/動機を変える/行動を変える
 幸せになるために/ポジティブ思考/期待と空想/最初の一歩を踏み出そう
 ●あなたの目標の定め方

第4章――やめる力
 チャンスをつかめ/あなたはどのタイプ?/失敗を恐れる
 回避の代償/やめる力に関するもうひとつの考え方

第5章――思考と感情をコントロールする
 
 感情知能と自己認識/マシュマロの実験/自己診断してみよう/やめる適性
 
 くよくよタイプから脱却する/シロクマを解放する│侵入思考の克服法
 学習曲線/意識的な目標設定
 ●やめる適性診断

第6章――目標を吟味する
 ゴリラを見た?/「目標設定の罠」│目標を管理する
 ピントを忘れるな/目標とアイデンティティ/アイデンティティが変わったとき
 目標の棚卸/気分と感情

第7章――目標マッピング
 都市伝説ではなかった/目標のリストアップ/内発的か外発的か
 対立しているか、整合性があるか/接近目標か回避目標か/優先順位をつける
 「フロー」で目標を評価する/メンタル・コントラスト(心理的対比)
 脳内から見たメンタル・コントラスト/「リトル・エンジン」を忘れる/決断のとき
 ●目標マップのサンプル1 ●目標マップのサンプル2

第8章――賢くやめる
 後悔をコントロールする/後悔から学ぶ/反事実的思考
 あなたの後悔は?/踏ん切りがつかないとき

第9章――心の磁石をリセットする
 次にどうするか考える/自己と回復力/楽観主義と目標の切り替え
 目標達成のための思考習慣/計画の利点/「幸せ」への道/まとめ

最後に――やめる知恵

謝辞/訳者あとがき/参考文献/註

略歴

アラン・バーンスタイン Alan B. Bernstein
ソーシャルワークの修士号を持ち、ニューヨーク医科大学やニューヨーク大学で心理療法を教えるかたわら、主としてキャリアや人生の転機についての本を執筆。著書にGuide to Your Career”“Your Retirement, Your Way”“Emergency Public Relationsなどがある。

ペグ・ストリープ Peg Streep
ベストセラーの共著もあるフリーライターで、主に女性のための自己啓発関連の執筆活動を展開。著書に、娘を愛せない母親の問題を取り上げたMean Mothers、NBCニュース主任医療エディターで医師でもあるナンシー・スナイダーマンとの共著Girl in the Mirror”“Necessary Journeysなど。ブログPsychology Todayも運営。

矢沢聖子 やざわ・せいこ
英米文学翻訳家。津田塾大学卒業。主な訳書に、『パワー・クエスチョン』、『なぜ昇進するのはいつもあなたではないのか』(CCCメディアハウス)、『ザ・アドバンテージ』(翔泳社)、『密偵ファルコ』シリーズ(光文社)、『スタイルズ荘の快事件』(早川書房)、『すすんでダマされる人たち』(日経BP社)ほか多数。
●装丁/谷口博俊(next door design)