アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準

アイビーリーグの入り方
冷泉彰彦 著
  • 書籍:定価2750円(本体2,500円)
  • 電子書籍:定価2200円(本体2,000円)
  • A5判・並製/232ページ
  • ISBN978-4-484-14223-4 C0037
  • 2014.07発行

ハーバードなどアメリカの名門大学は、どんな学生をどんな基準で合格させるのか? アメリカで長年、高校生の進路指導を行ってきた経験から、秘密のベールに包まれた「アイビーリーグ入試」のすべてを明かす。【厳選30大学「傾向と対策」データも掲載】

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内容

ハーバードなどアメリカの名門大学は、
どんな学生をどんな基準で合格させるのか?
アメリカで長年、高校生の進路指導を
行ってきた経験から、秘密のベールに包まれた
「アイビーリーグ入試」のすべてを明かす。

アメリカの高校生は志望校をどう選ぶのか?
ボランティア経験は絶対に必要なのか?
エッセイ(小論文)でNGとされるのは?
日本から出願する際の注意点・アピール方法は?

厳選30大学「傾向と対策」データも掲載

<目次>
はじめに 高まるアメリカ名門大学への関心
Chapter 1 志望校をどうやって選ぶのか?
Chapter 2 大学出願の具体的なプロセスとは?
Chapter 3 入試事務室は何を考えているのか?
Chapter 4 競争に勝つには何歳から準備すべきか?
Chapter 5 日本から出願する際の注意点は?
おわりに アイビーリーグに入学したら
Appendix 厳選30大学データ
(ハーバード、プリンストン、イェール、MIT、スタンフォード、UCバークレー、ジョンズ・ホプキンス、NYU、スワースモアetc.)

はじめに(抜粋)

 今、アメリカの大学入試への関心が高まっています。
 かつて、1980年代以降の20世紀末の日本では、アメリカ留学がブームになった時代がありました。ですが、ブームとは言ってもその動きは二つの分野に限られていました。それは、学部段階での「語学留学」。そして、専門性が決まってからの「大学院留学」です。
 これに対して、今回のブームは違います。年を追うごとに、勉強熱心な若者が高校を卒業した段階での「学部留学」を志向し始めているのです。それも、いわゆる「アイビーリーグ」と言われる8校をはじめとした名門大学への入学を志望する、そうした全く新しい動きです。

 今でもまだ、毎年3月末になると世間では「高校別東大・京大合格者ランキング」が話題になります。そのランキングで順位を上げた高校が出れば、どんな教育をしているのかが取材されて記事になるということもあります。
 ですが、その裏では全く別の動きが始まっているのです。その東京大学自体が、大学説明会や予約制の大学見学ツアーを始めているのです。
 それは、東大が危機感を持っているからに他なりません。合格しても、辞退する学生が少しずつ増えているのです。それも、以前からあるような他大学の医学部を選ぶという形での辞退ではありません。
 東大受験とともに併願していたアメリカの名門大学に進学する学生が、静かな動きとして増えてきているのです。
 東大が秋入学を志向したり、国際化の方針をPR したりしているのも、優秀な留学生に来て欲しいからだけではありません。学部段階で日本から海外を目指す学生が年を追うごとに増えてきている、この動きに対抗するためなのです。

<中略>

 本書は、そのようにして日本の高校からダイレクトにアメリカの名門大学に進学しよう、そうした進路を考え始めている、あるいはハッキリと自分の進路として決めつつある皆さんのために書かれました。
 ということはカテゴリとしては、「留学のガイドブック」になります。
 ですが、いわゆる実用書や参考書としての「留学の手引き」とか「留学マニュアル」ではありません。細かな出願方法であるとか、その際の英語での書き方など「出願の実際」について説明するのは本書の目的ではないからです。
 本書は、ただひたすらに「合格するためには、どんな基準をクリアすべきか」という1点に絞って記述した本です。
 アメリカの大学入試は「ペーパーによる一発勝負」ではありません。また「一芸入試」や「推薦入試」でもありません。
 各大学の入試事務室(アドミッション・オフィス= AO)に書類を提出して、審査してもらうのです。つまり書類選考なのですが、提出する内容は多岐にわたっており、非常に厳格な審査がされるのです。
 例えば、ハーバードやプリンストンといった難関校の場合は、入学者数の10倍以上の出願があると言われています。合格率に関しては、6%とか7%という数字です。
 何が合否を分けるのかというと、もちろん、SAT などの統一テストの点数や内申書の成績も重要ですが、その他に提出する履歴書の内容や、自分で書いて提出するエッセイの内容がモノを言うのです。
 では、本書は「模範的な願書の書き方」を示しているのかというと、そうではありません。
 模範的な願書とか、模範的なエッセイの答案というものは「ない」のです。
 それは、各大学が「あなたという個性」を評価して、その個性を大学のコミュニティに迎えることが、自分たちの大学にとって「より多様で活性化された環境を実現する」ことにプラスになるかどうかを、個別に、ある意味では主観的に、しかし真剣に判定してくるからです。

日本で言えば、大学入試よりも
就職試験に近い

 そこで、重要になってくるのが「合格基準」という考え方です。
 いわゆる「アイビーリーグ校」をはじめとしたアメリカの名門大学は、どんな「合格基準」を持っているのか、この点を理解することが大切になってきます。
 どんな基準なのでしょうか?
 一つ思い浮かぶのは、日本の大学生が就活で経験する、企業の採用試験の「選考基準」です。そこでは「コミュニケーション能力」であるとか、「地頭=知的な基礎能力」あるいは「その企業や業界に関する基礎的な知識」などが問われます。また「リーダー候補」という資質を問う場合もあります。
 そうした意味では、アメリカの大学の「合格基準」というのは、日本の社会で言えば大学入試よりも、就職試験に近いかもしれません。
 ですが、日本の就職試験については、面接の対策本などを徹底して研究すれば、ある程度は「対策」ができてしまうわけです。つまり、ある「模範的な態度」というのがあり、また「想定される質問の答え」を準備することも可能と言えば可能なわけです。

 一方、アメリカの名門大学の入試は、そのような「甘い」ものではありません。入試に受かることを目的として本を読むとか、練習をするといった「対策」では届かない世界がそこにはあるのです。
 あえて例を挙げれば、プロスポーツ選手が「スカウトされるかどうか」といった基準、あるいはプロのミュージカル劇団が「将来の主役候補を選考する」際の基準というのが、イメージとしては近いように思います。基礎が出来ていて、その基礎能力を示すデータがあり、そして何らかの経験の蓄積と、「他の平凡な候補にはないプラスアルファの才能がある」という「基準」です。
 こう言うと、何とも漠然としたイメージであるとか、それではあまりに主観的で不公平という印象を持つかもしれません。ですが、そうではないのです。
 アメリカは建国から240年近く、そして名門大学の多くは建国の前からありますから250年以上の歴史を刻んでいます。その長い時間、各大学はこのようにして選考を続けてきました。その結果として、ノーベル賞を受賞したり、発明発見で人類の生活を一変させたりするような人材、さらには大統領や企業のリーダーなどを育ててきています。
 そこには、ある「確立した合格基準」というものがあるのです。そして、その基準を知ることが、合格への近道、つまり「合格になる願書を書くための具体的な態度」を知ることになるのです。

<後略>

目次

はじめに――高まるアメリカ名門大学への関心

Chapter 1
志望校をどうやって選ぶのか?

1-1 受験シーズンは秋にスタートする
1- 2 日本とは違う志望校選びの難しさ
1- 3 理系と文系の区別すらない
1- 4 名門イコール「アイビーリーグ」ではない
1- 5 独特の存在の名門校もある
1- 6 リベラルアーツ・カレッジとは?
1- 7 小規模で柔軟性が高いリベラルアーツ・カレッジ
1- 8 アメリカの「女子大」は侮れない存在
1- 9 ヒラリー・クリントンも女子大学出身
1-10 ハイレベル教育を志向する公立大学
1-11 オナーズ・カレッジは授業料などで優遇がある
1-12 将来の専攻から志望校を決めるのが王道
1-13 ロケーション(立地)で志望校を絞り込む
1-14 大学の規模で志望校を絞り込む

Chapter 2
大学出願の具体的なプロセスとは?

2-1 出願の締め切りは3種類ある
2-2 「アーリー」をどう利用するか
2-3 アーリーディシジョンの5条件
2-4 出願には何が必要か
2-5 日本と違って内申書が重要
2-6 GPAの満点は「4.0」ではない
2-7 内申書重視の弊害は?
2-8 大学受験につきものの統一テスト「SAT」とは?
2-9 「SAT2」のスコアを求められることも
2-10 SATの代替となる「ACT」とは?
2-11 大学の単位に認定される「AP」
2-12 国際的に通用する「IB(国際バカロレア)」
2-13 エッセイは家で書いていい
2-14 受験の秋でも、課外活動は続けなくてはならない
2-15 ボランティア経験は絶対に必要なのか
2-16 SNS上の「悪ふざけ」は問題になるか
2-17 推薦状の意味合いは二つある
2-18 大学訪問は合否に影響するか
2-19 奨学金の三つのカテゴリ
2-20 名門校の奨学金制度は?
2-21 面接はカフェや図書館で行われる
2-22 ギリギリの時点で決める進学先
2-23 「補欠」になっていたらどうなるか

Chapter 3
入試事務室は何を考えているのか?

3-1 アドミッション・オフィスとは?
3-2 まず「期待されない学生像」がある
3-3 期待される学生像「授業への貢献」
3-4 ディベート能力は「叩きのめす」テクニックではない
3-5 期待される学生像「専攻がすでに決まっている」
3-6 なぜ専攻を最初から決める方が望ましいか
3-7 専攻が絞り切れなくても悲観する必要はない
3-8 期待される学生像「自己管理能力」
3-9 マルチタスクに耐えられるかどうかを重視
3-10 期待される学生像「伝統の継承者と破壊者」
3-11 「レガシー」の他に地元優先もある
3-12 期待される学生像「多様な人材を世界中から」
3-13 人種の多様化を進めてきた大学の歴史
3-14 期待される学生像「とにかく凄い学生」
3-15 AOは「願書の信頼性」をどう確認するのか

Chapter 4
競争に勝つには何歳から準備すべきか?

4-1 スタート地点は13歳
4-2 減点法ではなく加点法で上を目指す
4-3 なぜ数学では飛び級をすべきか
4-4 学校内の「特急コース」で飛び級を行う場合
4-5 学校と交渉して飛び級を行う場合
4-6 夏期講習を受けて飛び級を行う場合
4-7 プレップスクールという「飛び級」の方法
4-8 プレップスクールでは何が教えられているのか
4-9 アイビーキャンプに参加すれば有利なのか
4-10 重視されるスポーツ活動の評価基準は?
4-11 フリーパス&通年の陸上部は特別な存在
4-12 要領の良い若者が勝ち上がっていく仕組み

Chapter 5
日本から出願する際の注意点は?

5-1 日本から出願する場合の心構え
5-2 伝わらないと思ったら、自分で補足資料を用意する
5-3 堂々と「日本人」を主張して出願すればいい
5-4 日本人として学ぶ上での三つの留意点
5-5 アメリカの名門大学が知られていないという問題
5-6 日本からの出願は熱く求められている
5-7 内申書は単なる英訳では不十分
5-8 日本人が統一テストで高得点を取るには?
5-9 アメリカで通用する推薦状をもらうには?
5-10 エッセイでやってはいけないこと
5-11 エッセイの内容・書き方は「日本式」ではダメ
5-12 日本での課外活動をどうアピール材料にするか
5-13 大切なのは「整合性」と英語の読みやすさ

おわりに―アイビーリーグに入学したら

Appendix
厳選30大学データ

ハーバード大学
プリンストン大学
イェール大学
ブラウン大学
コロンビア大学
コーネル大学
ダートマス・カレッジ
ペンシルベニア大学(Uペン)
マサチューセッツ工科大学(MIT)
スタンフォード大学
カリフォルニア大学バークレー校(UCバークレー)
ジョージア工科大学
ジョンズ・ホプキンス大学
ジョージタウン大学
シカゴ大学
ノースウェスタン大学
カーネギー・メロン大学
ライス大学
デューク大学
ニューヨーク大学(NYU)
ボストン・カレッジ(BC)
ボストン大学(BU)
スワースモア・カレッジ
ハヴァフォード・カレッジ
カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)
マイアミ大学
南カリフォルニア大学(USC)
ミシガン大学
ペンシルベニア州立大学(ペン・ステート)
ラトガース大学

略歴

冷泉彰彦 Akihiko Reizei

ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修了(修士、日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

97年から、ニュージャージー州にあるプリンストン日本語学校高等部で進路指導にあたっている。同校は小規模ながら、日本語と英語の双方を学んだバイリンガルの生徒を送り出す学校であり、卒業生の半数はアメリカの大学に進学する。これまでに、プリンストン、コロンビア、コーネル、カーネギー・メロンなどといった名だたる大学に卒業生を送り出してきた。

『「関係の空気」「場の空気」』『「上から目線」の時代』(いずれも講談社)、『アメリカモデルの終焉』(東洋経済新報社)、『チェンジはどこへ消えたか』『アメリカは本当に「貧困大国」なのか?』(いずれも阪急コミュニケーションズ)など著書多数。ニューズウィーク日本版公式サイトやメールマガジンJMM(村上龍編集長)で連載を持ち、週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」も配信中。

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●イラスト/須山奈津希
●校閲/円水社

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