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世界の現場で僕たちが学んだ「仕事の基本」

世界の現場で僕たちが学んだ「仕事の基本」
国際機関で働く若手実務家17人 著
長嶺義宣・外山聖子 編
  • 書籍:¥1,500(税別)
  • 電子書籍:¥1,200(税別)
  • 四六判・並製/256ページ
  • ISBN978-4-484-14217-3 C0030
  • 2014.05発行
国際機関やNGOで勤務する若手実務家17名が、世界基準の「仕事の基本」を紹介。国籍、人種、文化や習慣を持つ人々が集まる組織で働くとはどういうことかや、語学力の磨き方 など世界へ飛び出す若者が知りたい、身近な先輩たちの生の声を届ける。

書籍

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電子書籍

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内容

国連機関、外資系企業、国際NGO・・・・・・
世界基準で仕事をするために知っておきたい50のこと


本書に登場するメンバーは、国際機関やNGOでキャリアを積む30~40代だ。
ほどんどがごく普通の一般家庭で生まれ育ったいわゆる純ジャパニーズで、
活躍する舞台がたまたま海外になった人たちである。

では、彼らが一般の人と違うところは何か?
それは、会議で発言し、期待以上の成果を出し、理不尽な扱いに対しておかしいと言うなど、日常で直面する「ミニ正念場」で「勝負」をしてきたところではないだろうか。そしてそのチャレンジ精神が、国内外を問わず、世界で生き抜く力を養う原動力になっているのだと思う。


●本書は、世界で生き抜くために必要とされる12項目を厳選し、各項目についてエピソードを書いた。
●ここではあえて技術的な「スキル」ではなく、より広い「人間力」に伴う「力」と表現した。
●17名のメンバーに、いかに問題と向き合い、解決して「力」を身につけたか、エピソード形式で語ってもらった。
●忙しい人のために、エピソードの趣旨を「まとめ」でくくった。

自己流で世界を変えよう!

もくじ

はじめに 
“ 他己紹介”プロフィール
 
1 決断力
進路を決める時、はじめに明確にすべきことは? ▼ 吉井愛
リスクがチャンスに変わる時 ▼ 栃林昇昌
自分を生かすキャリアのつくり方 ▼ 橋本直子
個人の決断力を磨き、決断できる組織をつくるには? ▼ 長嶺義宣
大きな決断をする時の判断基準は? ▼ 外山聖子
 
2 理解力
“ 初めて”のカルチャーショックをどう乗り越えた? ▼ 吉井愛
日本では考えられない理不尽とどう向き合うか? ▼ 湧川いづみ
国ごとに違う人間関係の「秩序」をどう把握する? ▼ 原田宗彦
相手に誤解されていると感じたら ▼ マーティンス和田洋子
相手の心をつかむ仕事の進め方 ▼ 長嶺義宣
 
3 協調力
損得勘定をやめて、チームに貢献する意味▼栃林昇昌
相手の文化を尊重しながら、チームを育てるには? ▼ 志茂雅子 
紛争地での不安・恐怖とどのように向き合うか? ▼ 古本秀彦
 
4 想像力
“ 想像”することを教えるために ▼ 湧川いづみ 
遠い国の現実を自分ごととして感じるには? ▼ 真壁仁美
相手の気持ちをどこまでくみ取るべき? ▼ 外山聖子
 
5 伝達力
存在感はつくり出すもの? ▼ 長嶺義宣 
どうしても相手に伝えたいことがある時には? ▼ 水田愼一 
コミュニケーションを円滑にする“ルール” ▼ 上月光 
相手の心に響く言葉のつくり方 ▼ 真壁仁美 
大切なことを相手に伝えるためには、すべてを語るべきか? ▼ 松沢朝子 
いかに伝達をしないようにするか? ▼ 沖本慶一郎
 
6 構築力
尊敬されるプロフェッショナルになるには? ▼ 原田宗彦 
会議場外で構築すべきこと ▼ 松沢朝子 
新しい人間関係を築くために ▼ 古本秀彦 
ローカルスタッフとのチームのつくり方 ▼ 外山聖子 
 
7 統率力 
マネージャーではなく、リーダーであるために ▼ 帯刀豊
多国籍チームをまとめるには? ▼ 水田愼一 
リーダーとして認められるには? ▼椎名規之
地域によって違う働き方を見抜く ▼古本秀彦
自分に合ったリーダーシップとは? ▼ 原田宗彦
 
8 勝負力
無理と思われた役割を提示されたら ▼ 古本秀彦 
グローバルな職場で評価される人とは? ▼ 帯刀豊
 
9 洞察力
治安の悪い環境で仕事をする時、最も大切にすべきことは? ▼ 松沢朝子
言葉以外のメッセージをどう読むか? ▼ 外山聖子 
いかに日本人としてふるまうか? ▼ 原田宗彦
理想を見失うことなく、進むには? ▼ 長嶺義宣
 
10 治癒力
過酷な住環境で心身のバランスを保つために ▼ 橋本直子 
逆風下でのストレスのコントロール方法 ▼ 吉井愛 
精神的なプレッシャーをはねのけるには? ▼ 椎名規之
 
11 持続力
不慣れな環境で継続的に質の高い仕事をするために ▼ 沖本慶一郎
何を自分の原動力とするか? ▼ マーティンス和田洋子 
“ 窓際”から這い上がるには? ▼ 古本秀彦 
打つ鉄はいつまでも熱い? ▼ 上月光
無力感から立ち上がるには? ▼ 吉井愛 
本当につらい時、辞めたくなった時、自分をどう励ますか? ▼ 橋本直子
 
12 言語力
他人任せにしない、私の語学学習法 ▼ マーティンス和田洋子 
実は最も重要な言葉は…… ▼上月光
多言語を習得するコツ ▼ 長嶺義宣 
自信のない言語でいかに発言するか? ▼ 橋本直子 
使える言語を増やすことが大事? ▼ 帯刀豊
 
おわりに

存在感はつくり出すもの? ▼長嶺義宣

国際社会で日本人は一般的に3S、つまりsilent, smiling, sleeping ( 静か、微笑んでいる、寝ている)で知られる。
どのようにして自分の主張と存在を示すべきだろうか?
 
 大学院修了後、ジュネーブのIOM(国際移住機関)にインターンシップの応募をしたところ、採用通知が届いた。それから毎月1000ドルで半年間インターンを続けたが、そこで得た経験はお金に換えられないものとなった。
 
 IOMで仕事を始め、数カ月経ったころだろうか。「あの会議は今まで俺がIOMを代表していたが、今後はお前に任せよう」と突然上司から提案があった。「あの会議」とは複数の国連機関の代表が毎週一堂に会し、政情分析や最近の人道危機について情報を交換し合う場である。「最近会議ばっかりで、本業に手が回らない」と上司の文句を聞いていたので、密かに「いつかこの仕事を任されるかもしれない」と期待していた。しかし、いざとなると緊張する。上司が現場経験が豊富で雄弁な法律家である一方、自分は現場経験ゼロの新卒上がり。上司レベルの会合に行くことはオオカミの餌食になるのと同義だ。焦った自分を見て、上司はニヤニヤ。「必要なサポートはするから、とりあえず行ってこい」。チラ見すると後ろでアシスタントが「がんばって!」と応援のウィンクを投げている。本当に大丈夫だろうか?
 
 案の定、現実は甘くなかった。会場に入ると、「上司は来ないのか?」と参加者に不思議がられる。今まで上司の「カバン持ち」だったインターンが代表にくら替えするとは思いもよらなかったのだろう。スーダン、アフガニスタン、イラク、ソマリアなど、過酷な勤務経験を勲章のように誇る参加者からすれば、無経験のインターンである自分は白紙同然に映ったのだろう。面と向かって話してくれたのは名刺交換が最初で最後だった。
 
 本番はなおさらである。インターンという身分をわきまえ、「自分は書記の職務で来ましたので……」と遠慮したのが失敗だった。質疑応答で順番に質問や発言が求められるが、自分はことごとくパスされる。無視されるどころか、会議を毎回重ねるにつれ、風当たりが強くなるのを感じる。参加者からは「お前はなぜまだいるのか」と冷たい目で見られ、「今回もIOMの代表はないので」と言う女性議長の皮肉まじりの発言は挑発にも聞こえた。
 
 自己嫌悪に陥り、音をあげようとしていた時だった。同会議で、某紛争国から戻って来た調査団の報告会が行われた。学生時代に勉強したことがある紛争国だ。質疑応答で恐る恐る手を挙げると、議長の表情がパッと明るくなり、指してくれた。初めての質問で緊張していたので、質問の内容はまったく覚えていないが、「よい質問だ」と丁寧な答えが返ってきたことが印象に残っている。会議後も、ある参加者が「さっきの質問だが、実はこうなんだ」と話してくれた。ここで初めて気付かされたのは、私の身分ではなく、自分が発言しなかったことに対し、参加者が違和感を覚えていたことだった。換言すれば、発言は「会議の参加費の後払い」で、発言を怠る者は「ただ乗り」を犯すがごとし。
 
 この質問の「デビュー」を皮切りに会議への参加方法を見直してみた。毎回参加する前に徹底的に議題の国や課題について調べた。そうすれば貧弱な質問に肉付けができるようになる。議題内容に詳しい同僚がいたら、上司の力を借りてインタビューを行ったり、現場の同僚に直接問い合わせたりした。各問題に対する組織の立ち位置や取り組みを、上司に煙たがられるまで根掘り葉掘り聞いた。
 こうして勉強するにつれて、自信がついてきて、今までの質問から「この問題については、うちの組織はこのように考え、このように対応しています」といった発言に切り替えることができた。余裕ができると冗談が言えるようにもなる。
 
 発言のみだとただのパフォーマンス(見せかけ)で終わってしまう。会合で上がった「宿題」は必ず次の会合までにやっていくことを心掛けた。代表としての信頼を得るためには、組織内で権限を持っていることを示すことが欠かせない。ある研究企画の費用負担について各機関の擦り合いになった時、自分の機関が費用の大半を請け負うと公言できたときは、参加者からは今までとは違う眼差しで見られた。

 ある日、事情で会議への出席が数分遅れてしまった時、他の参加者たちが待っていてくれた。「ヨシが来るまで待っていた」との議長の言葉を聞いて、ようやく晴れて代表として認められたな、とうれしかった。その後、その女性議長のもとで1年弱お世話になった。彼女の最後の離任スピーチで、「皆さんの活発な参加のおかげでとても有意義な会合を重ねることができました」との発言とともに、ニコッと自分に向けられた微笑みがまだ忘れられない。
 
まとめ*出る杭ではなく、出ない杭が打たれる。
  3Sと揶揄されるように、海外では出ない杭が打たれる。いくら貧弱でも格好悪い杭でもよい。出ることによって初めて杭に育ち、杭として認められる。

略歴

[編著者]
長嶺義宣(ながみね よしのぶ)
1977生まれ。ジュネーブ高等国際問題研究所修士課程修了。早稲田大学アジア太平洋研究科修士課程修了。内閣府国際平和協力本部事務局にて研究員。国際移住機関(IOM)、赤十字国際委員会(ICRC)コンゴ民主共和国やアフガニスタンで勤務。ICRC駐日事務所を設立、2012年6月まで所長を勤める。ダボス会議のヤング・グローバル・リーダーに選出。平和・安全保障研究所の14期奨学生。東京大学の「人間の安全保障」プログラム博士課程在籍。スイス育ち。人道法、人道支援の分野で出版物・講演歴多数。

外山聖子(とやま せいこ)
1970年生まれ。コロンビア大学大学院ティーチャーズカレッジ修士課程修了。内閣府国際平和協力本部事務局勤務。国際連合教育科学文化機関(UNESCO)パリ本部勤務後、ピースウィンズジャパン等のNGOで、スリランカ、東ティモールの緊急・教育支援、教育支援に従事。その後、ビジネス・ブレークスルーにて、MBA・グローバルリーダーのための英語教育プログラムを担当し、2012年4月より現職。専門は「緊急時の教育支援」「緊急・人道支援」。著書・講演歴多数。
●装丁/轡田昭彦+坪井朋子
●本文デザイン・イラスト/荒井雅美(トモエキコウ)
●校正/円水社