アステイオン79

アステイオン79
公益財団法人サントリー文化財団・アステイオン編集委員会 編
  • 書籍:定価1047円(本体952円)
  • A5判変形・並製/240ページ
  • ISBN 978-4-484-13238-9 C0030
  • 2013.11発行

特集「なぜ幸福か」鷲田清一/ニール・ネヴィット/森本あんり/髙山裕二/ニック・ポータヴィー/大竹文雄+黒川博文/古市憲寿 [論考] 酒井隆史/広田照幸/川野健 [写真で読む]武藤夕佳里 [連載]「リズムの哲学ノート」山崎正和ほか

書籍

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内容

特集 なぜ幸福か

すすんで不幸を求める人はいない。
そして戦争による死や破壊、悲惨な貧困が大きな不幸であることにも異論はなかろう。
実際、暴力や飢餓の恐怖から逃れることは、
今でもこの地球上の多くの人々にとっては幸福の見果てぬ夢なのである。
だからこそ、平和と繁栄のために我々は懸命に努力してきた。
戦争や飢餓の恐怖から解放されて長寿を全うできれば、
きっと幸福になれると信じて。

戦後七〇年近く、我々は武力紛争を慎重に避けて、
継続的な平和を享受してきた。高度成長も実現した。
その結果、治安は良好で、平均寿命は世界最高水準、
一人当たりのGDPもまずは世界に遜色のない水準とくれば、
我々はさぞ幸福なはずである。
だが、長らく国際的な意識調査は、日本人の幸福感が
経済的条件から予想される水準よりも相当に低いことを示してきた。
しかも不思議なことに、
「失われた」と称されることの多い過去二〇年の間、
今度は日本人の幸福度はむしろ上昇してきたことも同様の調査は示している。
いったいこれは何を意味するのだろうか。

翻って考えてみれば、
一途に幸福を追い求めて我々が得ようとしてきたものは、
実は何だったのだろうか。
そして幸福は、正義や善といった価値とどのように関係しているものなのだろうか。
他者の幸不幸と自分の幸福はどのように結びつくものなのだろうか。
幸福は計測したり、極大化したりできるのだろうか。
そして、人生でどうしても避けることのできない不幸や悲しみには、
何の価値も意味もないのだろうか。

戦争も飢餓もない時代の幸福と不幸を考えてみよう。

目次

●特集「なぜ幸福か」

「幸福論の幸不幸」 
・・・・・・鷲田清一(大谷大学文学部教授)

「幸せになった日本人」 
・・・・・・ニール・ネヴィット(トロント大学政治学部教授)

「幸福を追求するアメリカ人―反知性主義と宗教」 
・・・・・・森本あんり(国際基督教大学副学長)

「〈不幸〉の政治学へ―近代ヨーロッパ思想史の一解釈」 
・・・・・・髙山裕二(明治大学政治経済学部専任講師)

「幸福の経済学」 
・・・・・・ニック・ポータヴィー(ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス
経済パフォーマンスセンター研究フェロー)

「日本人の幸福度―経済学は幸せを語れるか」 
・・・・・・大竹文雄(大阪大学社会経済研究所教授)
黒川博文(大阪大学大学院経済学研究科博士後期課程在籍)

「日本の「若者」はこれからも幸せか」
・・・・・・ 古市憲寿(東京大学大学院総合文化研究科博士課程在籍)

●論考
「逃亡の近代―大阪「ディープサウス」形成史から」 
・・・・・・酒井隆史(大阪府立大学人間社会学部准教授)

「生まれつきの能力に応じた教育?―経済学への応答」
・・・・・・広田照幸(日本大学文理学部教授)

「自殺を語る社会―物語論の視点から」
・・・・・・川野健治(独立行政法人国立精神・神経医療研究センター
精神保健研究所 自殺予防総合対策センター室長)
●写真で読む研究レポート
「七宝のはなし」
・・・・・・武藤夕佳里(京都造形芸術大学日本庭園・
歴史遺産研究センター研究員)

●グラヴィア 地域は舞台
「歴史を受け継ぎ文化を生み出す」能勢浄瑠璃の里(大阪府豊能郡能勢町)

・・・・・・桑田瑞穂

●世界の思潮
「「例外国家」としてのソマリランド」
・・・・・・篠田英朗(東京外国語大学大学院総合国際学研究科教授)

「革命外交史観の打破」
・・・・・・川島 真(東京大学大学院総合文化研究科准教授)

「普通の大国になったアメリカ」
・・・・・・鈴木一人(北海道大学大学院法学研究科教授)

「「だから言っただろう!」─ジハード主義者のムスリム同胞団批判」
・・・・・・池内 恵(東京大学先端科学技術研究センター准教授)

●時評
「世界文化遺産としての富士山」
・・・・・・高階秀爾(大原美術館館長、西洋美術振興財団理事長)

「日本橋の上に架かる高速道路は「景観破壊」か?」
・・・・・・渡辺 裕(東京大学文学部教授)

「ドイツのマイスター」
・・・・・・藤森照信(工学院大学建築学部教授)

「揚州十日記」
・・・・・・奥本大三郎(ファーブル昆虫館館長)

「明治維新、維れ新たなり─最近の研究書から」
・・・・・・苅部 直(東京大学法学政治学研究科教授)

●連載
「リズムの哲学ノート 第2章 リズムと接続」 
・・・・・・山崎正和(劇作家)
●グローバルな文脈での日本

●アステイオン編集委員会委員

委員長 田所昌幸
池内 恵
苅部 直
張  競
細谷雄一
鷲田清一
顧 問  山崎正和

●ブックデザイン/熊澤正人+尾形 忍(POWERHOUSE)
●翻訳協力/斉藤裕一、ジャネット・アシュビー
●校閲/竹内輝夫
●編集協力/林晟一、阪急コミュニケーションズ書籍編集部

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