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それは誰にも教えたくないほどあなたの仕事に役立つ63のエピソード。「プレデターシンキング」篇

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ロバート・スタンフォード=タックは第二次世界大戦の英軍エース・パイロットだった。
わずか2年の間に約30機の敵機を撃墜した。
1940年、イギリスは敗戦への道をひた走っているように見えた。
イタリアの独裁者ムッソリーニは、ナチス・ドイツの側につこうと決めた。
勝利の分け前を期待して。
ムッソリーニはロンドン空襲作戦に乗り出した。
ドイツ空軍がロンドン大空襲で成果をあげているならイタリア空軍も、と思ったのだ。
襲来した敵機を迎え撃つべく、スタンフォード=タックの部隊に緊急発進指令が下った。
「現れたのがいつもの航空機、黒十字がついたドイツの爆撃機でなかったことに驚いた」
彼はそう回想している。
それはエンジン3基を搭載した、低速で旧式の航空機だった。
あの恐るべきメッサーシュミット戦闘機でなく、エレガントな小型複葉機が護衛についていた。
とても美しく、操作性に優れた航空機。
だが、低速で装備不足。
百戦錬磨のRAF(イギリス空軍)の前では形無しだった。
RAFには、弾薬が尽きると自機のプロペラで複葉機の上翼を破壊してみせた者もいた。
イタリア空軍の完敗だった。
当時のパイロットは空中戦終了後、撃墜した機体を調べに行くのが習慣だった。
スタンフォード=タックも撃ち落としたイタリア空軍の爆撃機を見に行った。
爆撃機は野原に不時着していた。
ドイツ空軍のドルニエ機やハインケル機の内部なら、何度も見たことがあった。
武器や弾薬、目盛盤や計器や爆弾で隙間なく埋め尽くされた、冷酷な殺人マシンだ。
イタリア空軍の爆撃機の機内は衝撃的だった。
ドイツ空軍機とは大違いだった。
コックピットは広く、自由に体を動かせた。
シートの座り心地は快適だった。
爆弾倉は小さく、しかも1つだけ。
機内を埋め尽くしていたのは、壁に吊るされた大量の食糧だった。
キャンティワインの瓶、パン、サラミ、パストラミ、チーズ……。
それを見て奇妙な罪悪感を覚えた、とスタンフォード=タックは語っている。
彼らを撃墜したのはフェアな行為ではなかった、と。
彼らは「遠足」に来ただけだった。
軽く飛び回っていくつか爆弾を落とし、英雄の帰還を待つ故国へ戻るつもりだった。
戦争という本気のゲームに参加するつもりなど、なかったようだった。
私に言わせれば、多くのクライアントもイタリア軍パイロットと同じだ。
宣伝広告という本気のゲームに参加していない。
競合相手から市場シェアを奪う戦いに。
彼らが求めているのは、素敵な広告、誰もが気に入る広告だ。
または、そこそこ話題になりそうなテレビコマーシャル。
万人に受けるもの。
物議を醸さないもの。
既存の競争の枠組みを揺るがさないもの。
誰にとっても都合が悪くないもの。
彼らは、衝撃を与えることを望んでいない。
騒動を起こすことを望んでいない。
戦うことを望んでいない。
つまり、彼らは間違った職業を選択している。
マーケティングは、戦争と同じくゼロサムゲームだからだ。
何かが欲しいなら、誰かからそれを奪わなければならない。
誰かが勝つには、誰かが負けなければならない。
言わば、「電話ボックスの中でのナイフ戦」だ。
これは、ブランドコンサルタントのアダム・モーガンの言葉だ。
逃げ場はない。
傍観者になる余地もない。
誰もがどちらかを選ばなければならない。
食う者になるか、食われる者になるか。
選ばなければ、誰かに運命を決められる。
あのイタリア空軍のように。