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それは誰にも教えたくないほどあなたの仕事に役立つ63のエピソード。「最高の文章」篇

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私にとって優れた文章とは、複雑なことをシンプルに語るものだ。
だから誰もがその文章を理解できる。
そして最高に優れた文章は、シンプルな物事を力強く語る。
だから誰もがその力を感じられる。
先日、ニュートリノについてのテレビ番組を見た。
ニュートリノは複雑な概念だ。
ニュートリノはいつでもどこにでもある。
毎秒、膨大な数のニュートリノが私たちの体を通り抜けている。
毎日、さらに膨大な数のニュートリノが地球を通り抜けている。
宇宙全体がニュートリノで満ちている。
ニュートリノは固体とみなされている物質を素通りし続ける。
そんな物質など存在しないかのように。
ニュートリノは特殊な液体によってしかとらえることができない。
ニュートリノをとらえるため、日本の研究チームがこの液体を満たした巨大タンクを建造した。
場所はある山の内部。
騒音も振動も、煙も日光も届かないところだ。
ニュートリノには質量がないから、どんな固体も存在しないかのように通り抜けてしまう。
山の頂上も。山の中腹も。山の下さえも。
だが実験中、まったく予想外のことが起きた。
タンクの底から来るニュートリノの速度が、上から来るニュートリノよりわずかに遅かった。
なぜか。
上から来るニュートリノは山を通り抜けるだけでいい。
一方、下から来るニュートリノは地球そのものを通り抜けなければならない。
より大きな質量を通り抜けるために、速度が落ちていたのだ。
科学者たちにとって衝撃的な発見だった。
これまでの前提が根底から覆された。
実は、ニュートリノには質量があった。
それがどれほどわずかであっても。
この発見がなぜ重要なのかと、番組では科学者に質問した。
一般の人にも理解できるように説明してもらえないだろうか。
科学者は答えた。「宇宙全体がニュートリノで構成されている。
その数は、私たちが固体とみなす物質よりはるかに多い。
ニュートリノは、そこに何も存在しないかのように人体を素通りし、地球を素通りする。
ニュートリノがあらゆる場所にある以上、その質量は私たちの物理的存在よりずっと大きい」
これではまだわかりにくい。
それは、つまりどういうことか。
なぜそれほど重要なのか。
科学者の答えは、最高の文章の基準を完璧に満たすものだった。
彼は複雑な科学用語をシンプルに言い換えた。
そのシンプルさによって、極めてパワフルに表現した。
誰もが理解できる言葉を使った。
誰もが思わず考え込むような言葉で語った。
科学になんの興味もない人さえ。
科学者は目を伏せた。
それから顔を上げ、質問相手を見た。
そして言った。「つまり私たちは、ほかの誰かの宇宙の中の幽霊なのです」
 
私に言わせれば、これこそ「最高の文章」だ。