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「評判」はマネジメントせよ 企業の浮沈を左右するレピュテーション戦略

「評判」はマネジメントせよ
ダニエル・ディアマイアー 著
斉藤裕一 訳
  • 書籍:¥2,000(税別)
  • 四六判・上製/408ページ
  • ISBN978-4-484-11119-3 C0034
  • 2011.12発行

トヨタ、BP、オリンパス、東電……事故・不祥事が起こった時、なぜ批判を浴びるような対応ばかりしてしまうのか? 危機に対処し、評判を立て直すための効果的な戦略を提示する。<序文:フィリップ・コトラー>

書籍

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内容

ほとんど毎日のように、自社の評判をめぐる
戦いに直面する企業が続出している。
その戦いに敗れれば、重大な代償を
支払わされるおそれがある。
この10年来、企業がさらされるようになった
厳しい監視という「ニューノーマル」。
会社の評判が本当に貴重な資産であるのなら、
なぜそれを、予算に恵まれず経営判断に対する
影響力ももたない広報部に一任するのか。

安全性で批判を浴びたが見事に挽回したメルセデス、
災害を機に普段の悪評を払拭したウォルマート。
賢明な戦略と持続的なアプローチがあれば、
危機に対処し、評判を立て直すことは可能だ。

●ジェフ・ストラットン: マクドナルド・コーポレーション上級副社長
「ダニエル・ディアマイアーは継続して、洞察と説得力に満ちた事実により実業界の関心を集めてきた。その事実は、われわれの考えや行動を改めて問い直すものである。こんにちの急速に変化するビジネス環境において、価値と評判はまさに基盤であり、ダニエルはなぜそれらが重要かを論理的思考と経験をもって提示してくれる」

●ロバート・C・クヌーパー: ベーカー&マッケンジー・パートナー
「本書は企業幹部の必読書だ。ディアマイアー教授は評判管理の第一人者であり、その決定的に重要な経営的役割の本質を、彼の新著はつかんでいる。本書に記されたケーススタディーと洞察は、現代の多文化グローバル経済を航行するビジネスリーダーたちのロードマップとなるだろう」

●サリー・ブロウント: ノースウエスタン大学ケロッグ経営大学院学長
「評判こそが重要である。企業の評判管理は、ブランド管理や広報戦略とは明らかに異なることを、ディアマイアーは説得力をもって論じている。彼は明確な戦略を概説し、積極的に評判を管理するためのツールを提示する。中核にあるのは、ますます複雑で不確かなビジネス環境において、信頼を管理していくためのプロセスなのである」

●エイタン・ゼメル: ニューヨーク大学スターン経営大学院教授
「評判は今、最も重要でありながら、最も脆弱で効果的な管理がなされていない資産の一つとなっている。この重要な著作において、ディアマイアーは、研究を元に最近の事例で解説を加えながら、革新的なフレームワークとツールに関する包括的調査の知見を提示している。本書はCEOや取締役の必読書となるだろう」

序文

フィリップ・コトラー(ノースウエスタン大学ケロッグ経営大学院名誉教授)

 フォーチュン誌は毎年、「最も賞賛される企業」のリストを発表している。2010年のトップ10にはアップル、グーグル、バークシャー・ハザウェイ、ジョンソン・エンド・ジョンソン、アマゾン・ドットコム、プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)、トヨタ自動車、ゴールドマン・サックス、ウォルマート、コカ・コーラが名を連ねている。これら「スター」企業のランクインに驚きはまったくない。

 このランキングは次の基準による企業経営者の投票によって決定されている。イノベーション、長期投資、経営の質、人材管理、財務健全性、製品・サービスの品質、社会的責任、グローバル競争力、会社資産の活用。この点にもまったく驚きはない。

 私たちにわかっているのは、この「最も賞賛される企業」へのランクインが千金に値するということである。リスト入りは、優秀な企業であり良好な収益が見込めるという信頼感を顧客とパートナーに与える。その信頼によって企業は収益性を高めることができる。

 評判管理(レピュテーション・マネジメント)に強い関心をもつ企業が増えていることには数々の理由がある。もちろん、多数のブランドマネジャーが関わるブランド管理への関心はかねてからある。しかし最近では一部の企業が、自社の評判の強化と保護を責務とする高位のマネジャーを置くようになっている。つまるところ、良好な評判の確立には歳月を要する一方で、悪いニュースが瞬時にしてそれを破壊しうる。

 企業は通常、評判の管理をCEO(最高経営責任者)と広報部に委ねている。広報部の仕事の大部分は、会社の評判の構築でなく擁護と保護である。しかし企業は今、会社もしくは社員のあらゆる言動、あるいはあらゆる不作為が自社の評判に影響を及ぼしうることを認識するようになっている。今日の新たなソーシャルメディア時代において、影響は会社および社員の言動を越えて広がっていく。企業に関するありとあらゆる良い話、悪い話がソーシャルメディア上で取り上げられ、世界中に広まりうる。さらに悪いことに、インターネットを利用する誰もが、その気になれば企業の評判を傷つける誤情報や偽情報を発信できる。企業が評判の構築、管理、保護の方法を学びたがっていることもまったく驚くにあたらない。

 私が専門とするマーケティングにおいては、ブランドの評判がすべてである。私たちは第一に、顧客がブランドをどう見ているかに焦点を置く。しかし企業の評判は顧客だけにとどまらず、投資家、社員、パートナー、社会全体も関わってくる。秀でた評判の構築は必要性と同時に難度も増している。企業は今、急速な技術進歩、真のグローバル市場、物質的充足だけでなく意味と目的を求める人々によって動かされる世界で活動している。

 今日の企業は、要求の度を増す一方にある株主と一般大衆の期待に直面している。環境およびコミュニティーに及ぼす影響に関して、企業はさらなる責任を負うよう求められている。企業は最近まで、経済的コストをカバーして利益を生み出せば事足りていた。それが今や、事業活動に結びつけられるさまざまな「悪」──大気・水質汚染、児童労働、雇用差別など──というカバーされていない社会的コストにも目を向けなければならない。企業活動によるあらゆる悪影響を喧伝しようとする非政府組織(NGO)などの監視集団に対して、企業は従属の度を増している。

 この環境の中で成功を収めているのは、強力な価値観に裏付けられた明確な目的を確立している企業である。そのような企業においては、世界のどこであれ従業員に会社の価値観がDNAとして組み込まれている。IBMやゼネラル・エレクトリック(GE)をはじめとする一連の「賞賛される企業」の社員は、自社のブランドが意味するものを社会的責任の側面まで含めて理解している。このような企業は、顧客、社員、パートナー、投資家が感じ取れるブランドのアイデンティティー、誠実さ、イメージの一貫性を確立している。

 ダニエル・ディアマイアーの本書『「評判」はマネジメントせよ』は、このような課題に真正面から取り組んでいる。企業のCEOと取締役たちは今、会社の評判が最も価値ある資産の1つであるという認識を強めている。ところが、重大な危機に陥る企業は後を絶たない。最近でもトヨタやBP、ジョンソン・エンド・ジョンソンのような賞賛される企業が危機に苦しんでいる。ディアマイアーは、困難の度をさらに増す現在のビジネス環境において、大半の企業が効果的な評判管理能力を欠いていると診断している。

 ディアマイアーは既存の評判管理のアプローチでは不十分である理由を示し、効果的な戦略とプロセスを構築する方法を教えてくれる。彼の核心的洞察の一つは、評判管理は市場におけるポジションと明確に一体化する必要があるという点である。評判管理は特定の専門家に委ねることのできるものではなく、必要不可欠なリーダーシップのスキルと組織的能力によって構成されるものなのである。

 効果的な評判管理能力の構築には、価値観に基づきプロセスによって支えられる適正な思考が求められる。ディアマイアーは入念なリサーチをふまえて、このような洞察をさまざまな業種の豊富なケーススタディーで示している。そして、評判管理を会社の文化および構造と深く一体化させる方法を教えてくれる。本書は今後の標準となっていくであろう。

目次

序文 フィリップ・コトラー

日本の読者へ ――未曾有の災害で問われるリーダーシップ

はじめに 「評判」という“第二の”経営課題

序章  三つの誤った思い込み ――「評判管理」の導入にあたって

第1章 「きかんしゃトーマス」のリコール ――評判危機の決定的瞬間

決定的瞬間
信頼レーダー
水の味
罪の問題
最初の24時間
危機のリーダーシップ
きかんしゃトーマスに学べる教訓
第1章のポイント

第2章 横転したメルセデス「Aクラス」 ――顧客を越えたブランド管理

東京での乾杯
顧客を越えて
評判の地勢
ソーシャルメディアに関して
ヘラジカを抱き入れたメルセデス
第2章のポイント

第3章 シェルvs.グリーンピース ――「セカンド・サークル」の高まる影響力

北海でのトラブル
戦略的思考
セカンド・サークル
対抗戦略
■強硬姿勢
■信頼性の移転
■建設的関与
ウォルマートと批判論
■戦略の転換
■ベントンビルのグラスノスチ
第3章のポイント

第4章 CEOの一四〇〇ドルのゴミ箱 ――経営者の特権とスキャンダル

憤りの根源
最後通告ゲーム
貧しい人々から多く取る
ネルソン・マンデラを訴える
行為が多くを物語る時
第4章のポイント

第5章 ウォルマートの災害支援活動 ――正しい行いとCSR(企業の社会的責任)

企業の社会的責任──その戦略的視点
市場で徳を争う
リスクと規制
「唯一のライフラインがウォルマートだった」
よきサマリア人の原則
第5章のポイント

第6章 遺伝子組み換えの不安の壁 ――危機を引き起こす五つの要因

不安の要因
■未知性
■無力感
■印象の強さ
■被害者
■恐怖
新たなテクノロジーの挑戦
ナノテク
イノベーションとその挑戦
第6章のポイント

第7章 プルデンシャル、末期患者から買い取る ――戦略的予知とリスク管理

生命保険の「生前給付」
予知
予知の実践
■リスク:保険買取業界の「悪評」
■リスク:家族
■リスク:患者の能力
死亡給付から生前給付へ
デス・ボンド
「われわれの家を守ろう」
第7章のポイント

第8章 AIMチームを結成せよ ――ガバナンス構造と情報活動能力

ガバナンス
情報活動
■問題の特定
■問題の評価
■問題のモニタリング
評判管理システム
第8章のポイント

第9章 転落前のアーサー・アンダーセン ――価値観、文化と「教えの時」

「アンドロイド文化」の興亡
ディアハンター
教えの時
二社物語
逃された教えの時
第9章のポイント

終章 SWATは銃口を向けた――戦略的思考と「専門家の罠」

謝辞

索引

略歴

[著者]
ダニエル・ディアマイアー Daniel Diermeier, Ph.D.
ノースウエスタン大学ケロッグ経営大学院教授。同校の「CEO(最高経営責任者)パースペクティブ・プログラム」の学術部長、フォード・モーター・カンパニー・グローバル・シチズンシップ・センターのディレクターを務める。2007年にはアスペン研究所より権威あるファカルティ・パイオニア・アウォードを受賞。評判管理(レピュテーション・マネジメント)の専門家として、アクセンチュア、カーギル、ジョンソン・エンド・ジョンソン、クラフト、マクドナルド、シェル、さらにはFBI(連邦捜査局)のアドバイザーを務めた。

[訳者]
斉藤裕一(さいとう・ゆういち)
ニューヨーク大学大学院修了(ジャーナリズム専攻)。主な訳書に『マッキンゼー式 最強の成長戦略』(エクスナレッジ)、『ストール・ポイント──企業はこうして失速する』『マイクロソフトの強さの秘密 リーダー・セラピー』『最新 ハーバード流3D交渉術』(以上、阪急コミュニケーションズ)などがある。

●装丁・本文デザイン/轡田昭彦、坪井朋子