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起業家精神のルーツ CHUTZPAH イスラエル流“やり抜く力”の源を探る

起業家精神のルーツ CHUTZPAH
インバル・アリエリ 著
前田恵理 訳
  • 書籍:定価1980円(本体1800円)
  • 電子書籍:価格1584円(本体1440円)
  • 四六判・並製/336ページ
  • 978-4-484-21104-6
  • 2021.3発行
起業家マインドを身につけることは可能か?
イスラエルはなぜ「スタートアップ国家」として成功しているのか?

軍のエリート諜報部隊出身、自身起業家で3人の男子の母親でもある著者が、イスラエルで幼少のころから養われる「CHUTZPAH」(フツパ精神)とその育て方について語る。



書籍

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電子書籍

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内容

強靭な起業家精神を身につけたい人、教育関係者、子育て中の方、必読!

アップル、グーグル、マイクロソフトといった世界的企業が続々とイスラエル企業を買収していることでも明らかなように、イスラエルはスタートアップ大国として知られる。

「Chutzpah」(フツパ)とは、ヘブライ語で「大胆さ」や「厚かましさ」を意味する語であるとともに、「普通ではできないことを敢然と行なう勇気」といった肯定的な意味をももつ。そして、この「フツパ精神」こそ、イスラエルのスタートアップ企業成功の秘密であり、イスラエルにおいては幼少期から育まれ訓練されるものであると著者は言う。

本書では、イスラエル国防軍のエリート諜報部隊(8200部隊)で起業家活動のスキルを修得、自らも起業して20年にわたりイスラエルのテック業界をリードしてきた著者が、イスラエルにおける「フツパ精神」とその「育て方」について明快に語る。

起業家精神はけっして天性のものではなく、筋肉と同じように、意識して訓練することで身につけ、強化することができるのだ。




イントロダクション

「そんなことは不可能だ、できっこない」
 こんな言葉を浴びせられればほとんどの人はあきらめてしまうでしょう。でも、イスラエル人の反応は、これとはまったく違います。彼らは不可能と言われたことを達成しようと奮い立ち、夢を描いて行動を起こします。その結果は当初描いた目標どおりにはいかなくても、それに匹敵するものを達成するのです。おそらく、当初想定したゴールを上回るすばらしい成果をあげることでしょう。
 このような彼らの姿勢の根底にあるのは、イスラエル特有の「フツパ」chutzpah 精神、つまり人生に対する決然とした態度です。それを粗野で頑固な態度と受けとる人もいるでしょうが、ポジティブにみれば、目標達成のためには穏当な態度よりも一途な姿勢を重視する精神とみなすべきでしょう。フツパ精神を適度にもてば、何事も可能になるのです。家族との夕食の席で自説を言い張る七歳の子どもであろうと、商取引でクリエイティブな解決策を提案する経験豊富なビジネスマンであろうと、フツパ精神のパワー──何事も達成可能とみなす、決然としていて勇敢かつ楽天主義的なパワー──がイスラエル人には浸透しているのです。
 フツパ精神のスパイスはイスラエル人の生活のあらゆる面でみることができます。それはまた、技術立国イスラエルの成功にとって不可欠な要素でもあります。イスラエルを「スタートアップ・ネーション」(起業国家)と呼ぶ人もいます。確かに、ぴったりの表現です。イスラエルは世界でもっともスタートアップ企業の集積度が高く、起業家精神のグローバルな拠点として米国を除く世界のトップにランクされているのです。
 私はよく次のような質問を受けます。イスラエルはどうやってイノベーションの発祥地になったのでしょうか? イスラエルはどうして創業の才を次々に生み出ことができるのですか? こうした質問に対する説明として、私はこれまで、先進技術を備えたイスラエル軍の影響とか、学習と探求心を重視するユダヤの長年の伝統などを指摘する声を耳にしてきました。でも、これらの説明は見当違いではないものの、視野が狭すぎます。私にわかってきたことは、イスラエル人は部族的コミュニティの内部でチャレンジとリスクに満ちた幼少期を送るという独特な方法によって育てられ、これがイスラエルの起業家精神を生み出すルーツであるということです。まさにこれこそが、イスラエル人すべてが備えているフツパ精神の根底にあるものなので
す。
 過去二〇年にわたり、私はイスラエルの起業生態系(エコシステム)にどっぷり浸かって、さまざまな洞察やデータや事例を蓄積してきました。事業を次々と立ち上げるシリアルアントレプレナー(連続起業家)と仕事をしたり、有能なイスラエルの若者たちを育ててきました。そうしたキャリアを積んだのは、私がイスラエル軍参謀本部諜報局のエリート部隊である8200部隊に所属していたときでした。その間に私はアクセラレーターという業務の促進役やインキュベーターというテクノロジーの才の産婆役を指導したり、グローバルなテクノロジー企業の上級幹部の任を引き受けたり、そして自らも起業家となり、また好奇心あふれる息子三人の母親にもなりました。
 長年にわたって、私はイスラエルの起業家精神のルーツを奥深くまで観察し、これに不可欠な主要因を突き止めてきました。その結果、イノベーションと起業家精神は魔法のように突如として生まれるものではなく、また「イノベーション遺伝子」を生まれながらにして宿した少数の選び抜かれた人たちによってなされるものでもなく、幼少期から育まれたある特定のスキルの産物であると強く確信するようになりました。
 もちろん私は一介のイスラエル人の母親にすぎず、私の考えは偏っているかもしれません。でも、なぜイスラエルがイノベーションの実験室であり、起業家精神に満ちているのかについての答えは、イスラエルの子育ての仕方にあると私は思っています。

(後略)



目次

イントロダクション

STAGEⅠ DISCOVERY
アイデア発見の土壌をつくる


第1章 ガラクタと遊ぶ
歴史を創るパワー=環境を変える力
遊びを通してリスクを学ぶ
協調性と問題解決能力
なぜ起業家はガラクタ遊びをすべきなのか?

第2章 「バラガン」を歓迎する
常に別のやり方がある
バラガンの機能
混沌は新しいファッションである

第3章 火遊びで学ぶ
子どもたちだけで焚火を楽しむ
責任を伴った自由、自由に伴う責任
荒野へ

STAGEⅡ VALIDATION
ニーズを発見し検証する


第4章 「We」の中に「I」がいる
個と集団とのポジティブな緊張
多様性をもった集団
子どもギャングのメリット

第5章 自由を求めて
独力で生きる子どもたち
校長先生をファーストネームで呼ぶ
袋小路に入ることの重要性

第6章 失敗は選択肢の一つ
失敗の効用
失敗したのはプロジェクトであって私ではない
失敗するのに早すぎることはない

STAGEⅢ EFFICIENCY
起業家精神と打たれ強さ


第7章 不確実性について
未知なるものと生きる
打たれ強さとは?
逆境を糧にして
脅威をチャレンジとみなす
ストレスの活用
人々を団結させるもの

第8章 リスクに満ちたマネジメント
最前線の若者
活発な青年運動
ツォフィーム・スカウト運動が目指すもの
子ども中心、大人はどこに?
ツォフィーム運動の核心──創造性、自発性、そして即興力
理想的な起業環境

第9章 若者たちに任せる
「クレンボ・ウイングズ」の物語
先頭に立つ若者
MDA──イスラエル版赤十字社と若者の活躍
LEAD ──若者のリーダーシップ育成プログラム
「マグシミム」と「サイバーガールズ」プログラム

第10章 社会的資源としての若者
若者向け年間奉仕プログラム
SOS子ども村
子どもたちが〝人生を先延ばしする〟理由

STAGEⅣ SCALE AND SUSTAINABILITY
持続的な成長をめざす


第11章 人的資本について
兵役制と選抜
一七歳のすべての若者が経験すること
将校の選抜法
ケーススタディ──イスラエル軍参謀本部諜報局8200部隊
単にイスラエル軍のためにではなく

第12章 文化について
イスラエル軍は「人民軍」である
「人種のるつぼ」政策
国全体に広がる社会的絆
軍事資本、社会的ネットワーク、同窓会組織

第13章 マネジメントについて
ボスは誰?
マーケットに先んじる
フラットな階層構造のメリット

第14章 即興力と最適化を求めて
ケーススタディ──イスラエル空軍
自ら考え、行動すること

STAGEⅤ RENEWAL
ソフトスキルを絶えず養う


第15章 スキルとネットワークの活用
ネットワークでつながる
個人の付き合いは?

第16章 世界を舞台に
ビッグトリップ
結局、世間は狭い
海外のイスラエル人

第17章 どうにかなるさ
何事も完璧ということはない
楽観主義と起業家精神
私たちはファラオの圧制を生き延びた。
 だから、この困難をも生き抜くことができる

謝辞
用語集
訳者あとがき
参考文献
原註





略歴

●著者 インバル・アリエリ INBAL ARIELI
イスラエル生まれ。フツパ精神とひよこ豆をペースト状にしたイスラエル料理フムスで育つ。テルアビブ大学法学士、経済学士、MBA(経営学修士)。
米国のNSA(国家安全保障局)に相当するイスラエル国防軍(IDF)のエリート諜報部隊である8200部隊の中尉時代に起業家活動のスキルを修得。軍役を離れた後、20 年間にわたりイスラエルのテクノロジー分野で指導的な役割を担い、イノベーター育成のための一連のプログラムを創設。現在は、IDFを退役した専門家と共同で設立したコンサルティング会社、シンセシス社(Synthesis)の共同CEO(最高経営責任者)を務め、リーダシップの評価・開発、エグゼクティブサーチ、コーチングなどを行っている。その他、スタートアップ・ネーション・セントラル(Start-Up Nation Central)やバースライト・イスラエル・エクセル(Birthright Israel Excel)、ワイツマン科学学研究所の起業家養成プログラム、スタートアップ学習プログラムのSCOLA、8200部隊の起業支援プログラムなどのボードメンバー(取締役)やシニアアドバイザー(顧問)も務める。夫とやんちゃな3人の息子とテルアビブ在住。https://chutzpahcenter.com/

●訳者 前田恵理 まえだ えり
福岡県生まれ。幼少期より父親の仕事の関係でワシントンDC、ニューヨーク等で過ごす。早稲田大学人間科学部卒業。Stanford Graduate School of Business LEAD Program修了。独立系投資銀行にてM&A アドバイザリー業務、プライベート・エクイティ・ファンド、ベンチャー・ファンド及びベンチャー企業などに関連したオルタナティブ投資及び投資家紹介業務に従事。現在は独立系業務改善コンサルティング会社にて幅広くコンサルティング業務に従事している。国内及びアメリカ、イスラエルの起業家や投資家とのネットワークをもつ。2018 年、米国フィッシュ・ファミリー財団主催の女性リーダー育成のためのJapanese Women’s Leadership Initiativeに選抜され、ボストンで4週間にわたる女性起業家養成プログラムを受講、現在同プログラムのフェロー。2019 年、文部科学省支援アントレプレナー育成武者修行プログラムに選抜され、約3週間イスラエルにて多くのベンチャー企業を訪問し、同国の起業家活動の実態を調査。この際に本書の著者と出会う。横浜市在住。






●ブックデザイン/轡田昭彦+坪井朋子