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人類vs感染症 新型コロナウイルス 世界はどう闘っているのか

人類vs感染症
國井 修 著
  • 書籍:¥1600(税別)
  • 電子書籍:¥1280(税別)
  • 四六判・並製/352ページ
  • ISBN978-4-484-20220-4 C0036
  • 2020.8発行
世界で今、何が起きているのか。

いまだ全世界で感染拡大を続ける新型コロナウイルス。
このウイルスの正体は?
各国はこの危機にどう対処しているのか?
日本モデルは効果的なのか?
感染症対策の第一人者が検証・提言。


書籍

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電子書籍

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内容

パンデミック(世界大流行)の始まりから今後の見通しまで、
錯綜する情報に振り回されないために、
いま正確に知っておくべきこと。


新型コロナウイルスとは?
危機発生の経緯は?
各国の危機の状況は?
どんな対策をとったのか?
感染者数・死者数・致命率・死亡率は?
検査体制は?
効果のある介入措置とは?
医療崩壊はなぜ起こったのか?
緩和策はどうすればいい?
日本はなぜ感染を抑え込めたのか?
第2波、第3波はあるのか?

そして、将来のパンデミックに人類はどう備えればいいのか?





はじめに

 Disease X(疾病X)──将来人類の脅威となるかもしれない、原因不明、対策もわからない新たな感染症。
 2018年、WHO(世界保健機関)は、エボラ熱、ラッサ熱、SARS(重症急性呼吸器症候群)など既知の危険な疫病に加えて、世界が優先的に研究開発すべき疾病リストを「研究開発ブループリント(R&D Blueprint)」に追加した。
「疾病X」のXは、Unexpected(予想外)の意味である。自然界に棲息する病原体が動物から人間に漏れ出し(spillover スピルオーバーという)、突然変異をして、ヒトからヒトに感染し始めることがある。天然痘、マラリア、ペスト……。人類がこれまで闘ってきた「疫病」の多くが、もともと自然界からやってきたものだ。エボラ熱、エイズ、SARSなど、近年世界を騒がせてきた新たな感染症を引き起こす病原体も、自然界からの贈り物だ。
 だから、「疾病X」がやってくることは、人類にとっては「予想内」、必然でもあった。
 しかし、それがいまの時代にこのような形で到来し、拡大し、これほどの悲惨な結果をもたらすことになるとは、誰が予想できただろうか。
 このウイルスはエボラ熱などとは違った戦法で忍び寄り、潜り込む。人間の油断に付け込み、意表を突いて奇襲攻撃をしかけ、気づいた時には驚くほどの犠牲者が生まれていた。
 感染は中国で始まり、アジアに広がり、欧州に飛び火して、各地で目を疑うような感染爆発や医療崩壊を起こした。100年前のスペイン・インフルエンザの悲劇を彷彿とさせる光景が、そこにはあった。
 心配ないと高をくくっていたアメリカにも感染は広がり、患者数と死者数はうなぎ上りに
急増。世界最多となった。その死亡者数は、あれほど世界を騒がせた中国の30倍近くに上り、ベトナム・アフガニスタン・イラク戦争の米国兵士の戦死者総数をも超えた。
 1ミリの1万分の1の大きさの敵を相手に、世界が束になって現在も闘いが繰り広げられている。が、本稿執筆時点(2020年7月)でその勝利は見えていない。
 ただし、新型コロナウイルスが中国・武漢市で集団発生した当初、またWHOが「国際的
に懸念される公衆衛生上の緊急事態」を宣言した頃、そして、イタリア・スペインで感染爆発・医療崩壊が起こった時期に比べると、この「見えない敵」に関するデータや情報は確実に増えた。敵の正体が少しずつ見えてきた。戦い方も見えはじめ、新兵器の治療薬やワクチンの研究開発も進んできている。

 本書は、新型コロナウイルスに関する情報をグローバルな視点で解説し、緊急提言をしてほしいとの依頼を受けて記した。
 私は現在、スイス・ジュネーブの国際機関で、世界三大感染症と呼ばれるエイズ、結核、マラリア対策を行っているが、我々が支援している100か国以上の低中所得国にも新型コロナウイルス感染が蔓延し、ある地域では今まさに爆発している。これらの三大感染症と新型コロナウイルス対策を同時進行しなければならない。これらの情報を共有したい。
 また、私が住んでいるスイスや、同僚たちの母国であるイタリア、フランス、スペインなどでも新型コロナウイルスが大流行し、ロックダウン(都市封鎖)が行われた。毎日の生活の中で感じたコロナとの闘い、また同僚たちとのやり取りの中で得た情報なども伝えたい。

 本書は8章構成となっている。
 第1章では、新型コロナウイルスとその感染症とはどのようなものなのか、簡単に整理して解説する。
 第2章では、2020年6月までの、新型コロナウイルスによる世界大流行(パンデミック)の推移や影響など全体像を説明し、併せて主要国の状況をデータで示す。
 第3章では、中国、韓国、台湾、シンガポール、ニュージーランド、オーストラリアなどアジア・オセアニアの国々の事例を説明し、教訓を整理したい。
 第4章では、イタリア、スペイン、イギリス、ドイツ、スウェーデン、アメリカなど、欧米の国々の事例を説明し、教訓を整理する。
 第5章では、イラン、ロシア、インド、ブラジルなど、中所得国、または新興国の中で感染拡大している国々の事例を説明したい。
 第6章では、多くの発展途上国を抱えるアフリカでの感染流行の現状、リスクと対策などを説明する。また、紛争などで国家が機能していない、いわゆる「脆弱国家」についても触れたい。
 第7章では、ワクチンや治療薬などの研究開発、その他の対策に関する国際協力・協調について述べる。
 そして第8章では、日本の対策を含め、これまでの新型コロナウイルスのパンデミックとその対策から得た教訓をまとめ、将来どうすべきかについて検討し、私見を述べたい。


目次

はじめに

第1章 新型コロナウイルスとは 
どんな病原体か?
ウイルスと感染症の正式名称は?
他のコロナウイルスとの違いは?
季節性インフルエンザとどこが違うのか?
どこから来たのか?
どのように伝播するか?
どのようにヒトの体内で感染・増殖するのか?
どんな検査方法があるのか?
一度感染しても再感染するか?
どのくらい死亡のリスクがあるか?
新型コロナウイルスは突然変異しているのか? 感染力が強くなっているのか?
ワクチンはいつになったらできるのか?
治療薬はあるのか?

第2章 パンデミックの全体像と世界の比較 
タイムライン
感染者数・罹患率
死者数・死亡率・致命率
検査数・検査率
主要国の感染流行・死亡に関するデータ

第3章 アジア諸国の感染流行と対応 
●中国 すべてはここからはじまった
情報隠蔽はあったのか?
ロックダウン
医療崩壊への対応
「方舟病院」の戦略性
ITの利用
知的貢献・研究の貢献
緩和策の方法
「第2波」の発生
●韓国 「韓国モデル」と世界が注目した国
過去からの学び
感染の始まりと広がり
徹底した情報公開とIT技術を使った戦略的データ活用
徹底した検査拡大を通じた早期発見・早期隔離・早期治療
限られた資源の有効活用と配分の最適化
制限緩和
●台湾 専門的知見を政治的決断につなげた国
SARSの教訓から学んだ準備と迅速な初動
専門的知見をもつ政治家とリーダーシップ
素早い対応につなげる管理体制とシステム整備
マスク対策
デジタル技術の活用
試される今後
●シンガポール 「明るい北朝鮮」の挑戦
SARSの教訓と初動
情報公開とITの活用
収束に向けた試練
●ニュージーランド 世界で最も厳しいロックダウンを実施した国
ニュージーランドからの教訓
厳しく、迅速な措置
リーダーシップとコミュニケーション能力
科学と指導力の一体化
緩和策
オーストラリアとの比較
今後の対策

第4章 欧米諸国の感染流行と対応 
●イタリア・スペイン 感染爆発と医療崩壊を起こした国
感染爆発の理由
高い致命率・死亡率の理由
対策とその後
●イギリス 公衆衛生トップからコロナ死者数欧州トップに移行した国
初動の遅れ
集団免疫戦略と専門家の政治的決断への影響
モデラーの活躍とバッシング
医療崩壊を防ぐための措置
検査体制の不備
介護施設での死亡
●ドイツ 欧州の優等国
首相のリーダーシップ
ドイツ人気質と危機への備え
早期発見・早期隔離
強固な保健医療システム
今後の試練
●スウェーデン 独自路線を崩さなかった国
なぜ独自路線をとったのか
反対意見と結末
強硬手段で感染を激減できたか
国民の信頼を得られた理由
今後の行方
●アメリカ 医療費世界一、感染者数世界一の国
リーダーシップの問題
初動の遅れ
スペイン・インフルエンザの教訓
大都市が作る感染拡大環境
格差が作る超過死亡
医療崩壊
出口戦略

第5章 新興国・中所得国の感染流行と対応 
●イラン なぜこんなところに? と不思議がられる国
中国との結びつき
宗教
集会と選挙、そして国民性
対策と緩和
イラン周辺の国々 ─ イスラム教徒が抱える課題
●ロシア 感染急増しながら死者が増えない国
感染流行拡大と対策
なぜ感染者数が急増したのか
致命率の低さ
医療機関での感染拡大
今後の行方
●インド 感染爆発中で止まらない国
感染の拡大と対策
ロックダウンの影響
インド周辺の国々
●ブラジル 政治的決断の重要性を思い知らされた国
初動の遅れとリーダーシップ
ブラジル人の文化・気質
貧困と格差
その他の中南米の国々

第6章 アフリカ・紛争国――懸念が残る地域 
アフリカの強み
アフリカの弱み
対策を行う上での問題
今後のアフリカの展望
紛争国・脆弱国
イエメン
アフガニスタン
イラク

第7章 国際社会はどう動いたか 
G7(主要7か国)の取り組み
G20(主要20か国)による取り組み
国連による取り組み
グローバルファンドの支援
WHOの役割
市民社会・民間の役割

第8章 新型コロナ流行から得た教訓と未来 
なぜ日本は感染を抑え込めたのか
介入措置
政治的決断と専門的知見との融合
情報の収集・分析・発信
公衆衛生と経済対策のバランス
産学官民連携・パートナーシップ
国際協力
ウィズコロナ、ポストコロナの時代
 
あとがき
主な参考文献

 

略歴

國井 修(くにい・おさむ)
グローバルファンド(世界エイズ・結核・マラリア対策基金)戦略・投資・効果局長。
1962年10月20日、栃木県大田原市生。学生時代にインドに留学し伝統医学とヨガを学ぶ。1988年、自治医科大学卒業。公衆衛生学修士(ハーバード
大学)、医学博士(東京大学)。内科医として病院や奥日光の山間僻地で診療するかたわらNGO を立ち上げ、国際緊急援助や在日外国人医療に従事。1995年、青年版国民栄誉賞である「人間力大賞(TOYP)」外務大臣賞とグランプリを受賞。国立国際医療センター、東京大学、外務省などを経て、2004年、長崎大学熱帯医学研究所教授。2006年より国連児童基金(ユニセフ)に入り、ニューヨーク本部、ミャンマーでの活動を経て、2010年より内戦中のソマリアで子どもの死亡低減のための保健・栄養・水衛生事業を統括。2013年2月より現職。これまで110か国以上で人道支援、地域保健、母子保健、感染症対策、保健政策の実践・研究・人材育成などに従事してきた。グローバルファンドは世界で最も多くの人命を救っている国際機関のひとつで、2002年の創設よりこれまでに3400万人の人命を救ってきた。






cover photo/gettyimages

●ブックデザイン/轡田昭彦+坪井朋子
●校閲/竹内輝夫