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閨と厨

閨と厨
寿木けい 著
  • 書籍:¥1500(税別)
  • 電子書籍:¥1200(税別)
  • 四六判・並製/200ページ
  • ISBN978-4-484-20204-4
  • 2020.2発行
ツイッターの人気アカウント「きょうの140字ごはん」の持ち主による、初の書き下ろしエッセイ集。著者の料理に宿る美意識と思想は日常の1コマにも確かに通じている。妻として、母として、働く女として、あるいは娘として…。女は皆、いろんな顔を使い分けながら日々をサバイブしている。「ふつうの戦士」どうしで心をほぐし合えたら。いたわり合い、励まし合い、明日を闘うための打ち明け話20篇。

書籍

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電子書籍

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内容

阿修羅のごとく生きている。
女40代、「ふつうの戦士」。
みんなとシェアする、寝しなと起きがけの5分間。
明日も果敢であるために。


女は誰しも、たくさんの顔をもつ。妻の、母の、働く女の、顔。笑い顔、泣き顔、怒り顔。そして女どうしで見せ合う顔。ツイッターのフォロワー数11万人超。大人気アカウント「きょうの140字ごはん」の持ち主による初の書き下ろしエッセイ集。年を重ねるからだについて気づいた『からだの始末』、早逝した美しい姉とのことを愛しむ『姉の温度』、出産直後の母たちの現代らしくもあたたかい連帯を書いた『母たちの狼煙』など。結婚、出産と子育て、キャリア、血縁の関係、食べること、飲むこと、ひとりの時間など、自身をふくむ同世代のすべての「ふつうの戦士たち」の懐へ投げかける、短い打ち明け話20篇。

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 彼女の前にお酒が運ばれてきた。
 道しるべのようにすっと立ち、グラスを唇へもっていく。ひと雫、ひと雫、愛おしむように喉へ送る姿がなんだか珍しいような、同志のような気がして、私は彼女から目が離せなくなった。
 半分ほど飲んだ頃だろうか、彼女が薄いコートのあわせをさっとはだけた。
 すっかり温まったひとが、満足そうにマフラーや帽子を次々に脱いでいくような、ゆったりとした所作で。
 胸元から、抱っこひもにくるまれた小さな頭がのぞいた。
 母親は、姿勢もリズムも乱すことなく酒を飲み、何本かの串を食べると、何事もなかったように街へ合流して行った。
 満たされた母の胸とお腹は、どんなにかぬくかったろう。
 ひとの小さな幸運に気が付くこともまた、私の幸運のひとつだと、そう感じるようになった。
 彼女の背中が、夕暮れの雑踏に溶けこんでいく。その足取りが誰よりも力強く自由であることを願った。
(『まっすぐ飲む』より抜粋)
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寿木けい(すずき・けい)

富山県出身。早稲田大学を卒業後、出版社に勤務。フォロワー数11万人を超える(2020 年現在)ツイッターの人気アカウント「きょうの140 字ごはん」の持ち主でもある。趣味は読書と仏像巡り。好物はカキとマティーニ。著書に『いつものごはんは、きほんの10品あればいい』(小学館)、『わたしのごちそう365 レシピとよぶほどのものでもない』(セブン& アイ出版)。新聞やウェブサイトに食や生活に関する連載も持つ。
 

目次

ひぃの距離
■ 夜の一篇 行儀の悪い化粧
■ 朝の一篇 卵
 
ふぅのふぅ、ふぅ
■ 夜の一篇 まっすぐ飲む
■ 朝の一篇 声を育てる
 
みぃのあけすけ
■ 夜の一篇 額縁ひとつ
■ 朝の一篇 からだの始末
 
よぉの余韻
■ 夜の一篇 姉の温度
■ 朝の一篇 回るかかと
 
いつの祝福
■ 夜の一篇 不倫と乾杯
■ 朝の一篇 ダイヤモンドが欲しい
 
むぅの別嬪
■ 夜の一篇 水を裁つ
■ 朝の一篇 器をさがす

ななの孤独
■ 夜の一篇 店との約束
■ 朝の一篇 足の指
 
やぁの親と子
■ 夜の一篇 女の指先
■ 朝の一篇 父の娘
 
ここのつの未来
■ 夜の一篇 今晩会おうよ
■ 朝の一篇 四角いおいしさ
 
とぉの女たち
■ 夜の一篇 誰かの人生
■ 朝の一篇 母たちの狼煙