トップ > 新刊書籍 > 新版 リーダーシップからフォロワーシップへ

新版 リーダーシップからフォロワーシップへ カリスマリーダー不要の組織づくりとは

新版 リーダーシップからフォロワーシップへ
中竹竜二 著
  • 書籍:¥1600(税別)
  • 電子書籍:¥1280(税別)
  • 四六判・並製/248ページ
  • ISBN978-4-484-18203-2 C0034
  • 2018.1発行
日本ラグビー界で指導者として活躍し、チームづくり(組織づくり)で多大な実績を残した著者による、これからの時代の新しい組織論。

書籍

Amazon 7net 楽天BOOKS TSUTAYAonline

電子書籍

Amazon kindle 楽天kobo honto Reader Store 紀伊國屋書店 BookLive

内容

フォロワーシップとは――
どうやって目の前の部下を教育すべきかを考えるのではなく、「どうやったら、彼らが自然と勝手に成長してくれるのか」を、突き詰めて考え抜くことである。

強烈なカリスマ・清宮克幸氏の後任として早大ラグビー部監督となった著者。「日本一オーラのない監督」と呼ばれながら、常勝ワセダのプレッシャーを背負いつつ大学選手権2連覇を果たした組織づくりの秘密を明かした2009年の著書に、「これからのフォロワーシップ」について論じた終章を新たに加えてリニューアル。

「全員がリーダーと同じ気持ちでいること。与えられたり指示されたりするのを待つのではない。最終的に決断を下すのはリーダーだが、常にフォロワーもリーダーと同じように主体性を持って考える。これは私の理想とする組織でもある」(本文より)

はじめに

 私が「カリスマリーダー不要の組織づくり」を真正面から提案する初めての著書として、『リーダーシップからフォロワーシップへ』を上梓してから9年が経つ。
 発行当時の世間からの反応は、決してポジティブなものばかりではなかった。
  
「リーダーにカリスマ性を求めないなんて、信じられない」
「〝フォロワーシップ〟という言葉はインパクトに欠ける」
「それで本当に部下はついてくるのか」
「本当に組織の成長につながるのか、イメージできない」
  
 戸惑うのも無理はない。
 当時の「リーダー」のイメージと言えば、強い牽引力のある言葉で、フォロワーがやるべきことを指示し、目に見える結果を早く出す能力に長けた指導者、というのが主流だった。
 堂々とした風格、張りのある声と明確なディレクションといった、分かりやすい〝らしさ〟が求められていた時代。
 一方で、そのような〝らしさ〟をまとったカリスマ性のある人物は日本ではなかなか現れにくいため、長らく「リーダー不在」が叫ばれていた。
  
 日本の企業はカリスマ的リーダーシップを発揮できる数少ない人材をこぞって求めて配置し、部下に対して明確な目標をトップダウンで設定し、達成のための方法論まで手取り足取り指導する体制をつくろうとしてきた。
 それは非常にうまく機能したはずだ、ごく短期的には。
「半年後までに売り上げ3000万円を達成する」といった短期目標には、トップダウン型のリーダーシップがうまくいく。それで一時的な業績回復を遂げた企業もあっただろう。
  
 しかし、限界はすぐにやってくる。
 この方法では、部下が育たないからだ。
 トップダウンの命令をただこなすだけの「指示待ち人間」ばかりが増え、リーダーのアイディアが枯渇した途端、組織の成長は停滞する。
「優秀なリーダーを据えているはずなのに、業績が伸びないのはなぜなのか」
 多くの経営者たちが壁に突き当たった、というのがこの10年で起きていたことではないだろうか。
  
 私はたまたま自らの実践の中で、リーダーこそ「フォロワーシップ」の意識を持つことが重要であることを知っていた。
 つまり、組織を構成する一人ひとりが自ら考え、行動し、成長しながら組織に貢献するための機会を提供し、環境を整える努力をすることだ(詳細は本編に譲るが、まずは「リーダー」「フォロワー」という〝役職〟と、「リーダーシップ」「フォロワーシップ」という〝役割〟を分けて考えることが出発点となる)。
 丸の内にある大手シンクタンクに勤めていた2000年代前半から、わたしはこの「フォロワーシップ」の重要性を訴え続けていた。
 当時はほとんど見向きもされなかったが、その後、早稲田大学ラグビー蹴球部の監督に就任してからも、監督が前面に出る指導ではなく、選手自らが考えて行動するチームづくりを徹底し、大学選手権連覇を達成した。
 この私自身の実践をもとに本書をまとめたのが2009年のことである。
 かつて求められていたカリスマ的リーダーシップに限界があることを、経営者たちが気づき始めた頃だった。
  
 あれから現在に至るまでの間に、だんだんと「自ら考える部下育成」「自走する組織」といった言葉が世に出回るようになり、「フォロワーシップ」による組織運営を好意的に受け止める流れが加速している。
 それにはいくつかの背景があり、一つは、人材育成の科学的研究の進展である。
 事例研究、およびその体系化によって、従来型の属人的なカリスマ性に依存したリーダーシップが組織を必ずしも成長させないことが分かってきた。
 いや、成長させないどころか、部下に上から目標を押しつけるだけのリーダーは、むしろ「ディミニッシャー(消耗させる人)」として否定されるようにまでなってきた。
 近年、人材育成の分野では、「あなた方の組織に、ディミニッシャーはいないか?」と警鐘を鳴らすことが珍しくない。つまり、部下自身が目標を決めるチャンスや試行錯誤しながら学ぶチャンスを奪い、振り回して消耗させるだけの人。かつて賞賛されていたはずのカリスマ的リーダーは、それほどネガティブな文脈で語られるようになったのである。
 一方で、代わりに歓迎されているリーダー像は「マルチプライアー」、すなわち「増殖させる人」。自分だけが存在感を発揮するのではなく、部下一人ひとりが自ら成長し、活躍の場を広げる手助けをするリーダーシップが、組織の永続的成長に不可欠と考えられるようになったのだ。
  
「産業をとりまく環境変化」という背景も大きい。
 新商品をリリースすると同時にインターネット上で世界中に情報が拡散される時代において、どんなに斬新で革新的なアイディアでも、明日には世界のどこかで真似される。たった一人の発想力で勝てる時代は過ぎ去ったのだ。
 そこに集まった全員の知恵を出し合い、共有し、議論して、よりよいアイディアを磨き続ける。そんな組織でなければ生き残れないという危機感を、多くの経営者たちが肌で感じている。
  
 着実な長期的成果・成長を求める組織ほど、フォロワーシップを取り入れようという動きもある。
 象徴的なのは、〝世界最高峰の少数精鋭チーム〟であるNASA(アメリカ航空宇宙局)が、宇宙飛行士に求められる重要な資質の一つとしてフォロワーシップを唱え始めたことだ。
 ごく狭く、資源が限られたストレス空間の中では、明確な指示を的確なタイミングで発するリーダーシップだけでなく、いかに周囲の様子を注意深く観察し、他人の達成したい目標をすくい上げてサポートできるかというフォロワーシップの資質が欠かせないのだという。
 ここにきて、世界のトップクラスの組織がフォロワーシップ型人材育成へとシフトしようとしているという潮目を感じる。
  
 私が長年正しいと信じてきたことを科学的に証明する研究発表を目にしたり、「フォロワーシップについて教えてほしい」という依頼をいただいたりする機会は、この9年で格段に増えた。
 自分としては、ただ淡々とやってきたことに、いつの間にか世の中の流れも同調してきたという感覚でしかないのだが、「リーダーにはカリスマ性がなければならない」と思い込み、自信を持てずにいた人たちを少しでも勇気づけられるようならとても嬉しい。
  
 私自身にも変化があった。
 尊敬する同窓の先輩である名将・清宮克幸監督の後を引き継ぐ形で監督を引き受けた早稲田大学ラグビー蹴球部では、ありがたいことに2007年度、2008年度と2年連続で全国大学選手権を制覇することができた。
 2010年2月に退任した後は、日本ラグビーフットボール協会の初代コーチングディレクターという役目をいただいた。言うなれば、コーチを育てるコーチになった。
 地方を回りながらフォロワーシップの概念を伝え歩く2年間は、私自身にとって大いに刺激と学びを得る日々であった。
 2012年にU20(20歳以下)の日本代表監督に就任してからも、私なりのフォロワーシップのあり方を磨き続け、2015年にはワールドラグビーチャンピオンシップでトップ10入りという結果を残すことができた。
 この頃、企業のリーダー育成に特化したプログラムの開発も進め、同年に株式会社チームボックスを設立。「これまでのリーダー育成では限界を感じている」という経営者の悩みに寄り添い、私の経験に基づく中長期プログラムを提供している。
 プログラムを実施した企業を追跡調査してみると、「優秀で信頼を集めるリーダーほどフォロワーシップを発揮している」という結果も見えてきた。

 私が本書で伝えたいメッセージは大きく二つ。
  
 リーダーシップの形は一つではないこと。
 そして、強い組織をつくるリーダーには誰でもなれるということだ。
  
「あいつはリーダーに向いている、向いていない」という議論は、リーダーシップを一義的にしかとらえていない。
 リーダーシップには様々なアプローチがあり、そのアプローチの中でも近年、有効性が評価されてきたのが「フォロワーシップ」の手法である。
「自分はリーダーに向いていないのに、役職を与えられてしまった」と不安に感じている人、あるいは「自分は組織のために頑張っているはずなのに、なぜか結果が出ない」と悩んでいる人にこそ、ぜひ本書を手にとってほしい。
  
  
 新版として刊行するにあたり、巧みなフォロワーシップによって実績を挙げているコーチの具体的行動を紹介しながら、あらためて「いいリーダーの資質」についてまとめた終章を加えた(第1〜7章は旧版をほぼそのまま踏襲している)。
「リーダーらしくないリーダー」と言われ続けてきた私だからこそ伝えられるノウハウを、本書で惜しみなく伝えたい。

目次

はじめに

第1章 組織論の見直し

組織論の定義と分類
 リーダーが考える「リーダーシップ」
 リーダーが考える「フォロワーシップ」
 フォロワーが考える「フォロワーシップ」
 フォロワーが考える「リーダーシップ」

第2章 リーダーのためのリーダーシップ論

リーダーに求められる資質とは
 理想のリーダー
 ストッグディルの特性論
 流行りの「〜力」シリーズ
 実際の管理職研修から
 理想のリーダー像における矛盾
 最悪なリーダー像を描く
 理想のリーダーはブレないこと

第3章 スタイルの確立

スタイルの必要性
 スキルとスタイルの違い
 中竹のスタイルとは
 中竹スタイル① 日本一オーラのない監督
 中竹スタイル② 期待に応えない
 中竹スタイル③ 他人に期待しない
 中竹スタイル④ 怒るより、謝る
 中竹スタイル⑤ 選手たちのスタイル確立を重視

スタイル確立の鉄則
 スタイル確立の鉄則① 多面的な自己分析
 スタイル確立の鉄則② できないことはやらない
 スタイル確立の鉄則③ 短所こそ光を!
 スタイル確立の鉄則④ 引力に負けない
 スタイル確立の鉄則⑤ 焦らず、勇気を持って

VSSマネジメント
 ビジョン設定
 ストーリー作成
 シナリオ演出
 カリスマリーダー後のVSSマネジメント

スタイル確立の罠
 罠① 「スタイルがないのがスタイル」は×
 罠② スキルが全くなければスタイルなし
 罠③ 安易なオンリーワン思考
 罠④ 無謀な夢
 罠⑤ 情報過多での混乱

スタイルの強み
 スタイルとは、逆境でこそ力を発揮する
 スタイルを持つと新しいチャレンジができる
 スタイルの共有
 個のスタイルから組織のスタイルへ

第4章 リーダーのためのフォロワーシップ論

フォロワーをいかに育てるか
 理想のフォロワー像を描く
 部下に主体性を持たせる
 最悪なフォロワー像
 マニュアル化による自主性逓減
 安心安全による自主性逓減
 部下の成長チャンスとリーダーの手助け
 フォロワーの資質と目標に合った環境
 フォロワーのスタイル構築支援
 フォロワーシップの最終形

第5章 フォロワーシップの実践

フォロワー育成の中竹メソッド
 フォロワーとの個人面談
 面談チェックポイント①  ポジティブ(前向き)で未来志向であるか
 面談チェックポイント②  弱点克服に偏りすぎていないか
 面談チェックポイント③  周りの引力に負けていないか
 面談チェックポイント④  スタイルがオンリーワンになっているか
 面談チェックポイント⑤  スタイルを発揮する状況をイメージできているか
 選手の短所に光を当ててあげる
 懐に入り込む
 ワンサイズ大きなスタイルへ
 お互いにとってエネルギーになる面談
 チームトークの効果
 チームトークの条件
 チームコンセンサスの必要性
 コミュニケーションのスキルと心構えの指導
 学生幹部ミーティング(委員会)
 マルチリーダー制

第6章 フォロワーのためのフォロワーシップ論

個人と組織の関係性
 なぜ組織に属するのか
 フォロワーの五つの選択肢
 自分自身の個としての成長を最優先
 フォロワーであることのメリット
 フォロワーとしての力をつけるとは
 プロジェクト化=仲間と共に
 フォロワーとしての自覚とプライドを持つ

第7章 フォロワーが考えるリーダーシップ論

フォロワーによる組織変革
 世代交代でのリーダーシップ
 リーダーのプライドコントロール
 ポジションリスペクト
 リーダーを交代させる
 組織から立ち去る

終 章 これからの時代のリーダーとは

優れたコーチの共通項
 勝利よりベストを尽くすことを評価する
 一対一のコミュニケーションを大事にする
 嫌われることを恐れない。そしてフォローもする
 「君がコーチならどうするか?」
 一つの方法にこだわらない
 “I don’t know” と言える

私自身の試行と成果、そしてこれから

おわりに







略歴

中竹竜二 なかたけ・りゅうじ
公益財団法人日本ラグビーフットボール協会コーチングディレクター
株式会社チームボックス 代表取締役
1973年、福岡県生まれ。早稲田大学人間科学部に入学し、ラグビー蹴球部に所属。同部主将を務め全国大学選手権で準優勝。卒業後、イギリスに留学。レスター大学大学院社会学部修了。帰国後、株式会社三菱総合研究所入社。2006年、早稲田大学ラグビー蹴球部監督に就任。2007年度から2年連続で全国大学選手権優勝。2010年、日本ラグビーフットボール協会
初代コーチングディレクターに就任。2012年より3期にわたりU20日本代表ヘッドコーチを経て、2016年には日本代表ヘッドコーチも兼務。2014年、株式会社チームボックスを設立、企業のグローバルリーダー育成トレーニングを行う。
主な著書に『部下を育てるリーダーのレトリック』(日経BP社)、『マネジャーの最も大切な仕事』(英治出版、監訳)など。
●装丁・本文デザイン/轡田昭彦+坪井朋子
●編集協力/宮本恵理子
●校正/円水社