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ペンブックス salon de SHIMAJI バーカウンターは人生の勉強机である

バーカウンターは人生の勉強机である
島地勝彦 著
  • 書籍:¥2,000(税別)
  • 電子書籍:¥1,600(税別)
  • 四六判・上製/328ページ
  • ISBN978-4-484-14227-2 C0095
  • 2014.09発行
エッセイスト&バーマンであるシマジが、シングルモルトに纏わる逸話を縦横無尽に語り尽くす「Pen」の人気連載が書籍化。架空のバーがいつしか現実のバーとなり、有名無名の怪人物が登場して彩りを添える、シングルモルト・ストーリーズ。タモリさんも賞賛!

書籍

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電子書籍

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内容

(隠れシングルモルト・ラバーの)
タモリさん賞賛!
「圧巻である。本書には悪魔と天使が乱舞している」

作家・エッセイスト・バーマンとして、
「サロン・ド・シマジ」のマスターであるシマジが
シングルモルトに纏わる逸話を
縦横無尽に語り尽くす
雑誌「Pen」の人気連載が書籍化。

架空のバーがいつしか現実のバーとなり、
有名無名の怪人物が登場して彩りを添える。
お酒を愛するすべての老若男女へお届けする、
シングルモルト・ストーリーズ。

バーのカウンターには
笑いがあり涙があり人生がある。

はじめに

売文の徒にとって担当編集者が能力があるかないかは死活問題である。幸いわたしの現在の担当者たちはみな異彩を放ってくれている。

Penの連載〝サロン・ド・シマジ〞を考案したサトウ・トシキは、わたしの処女作『甘い生活』(講談社刊)を読んで仕事場のドアをノックしてきた。はじめて会うトシキはファッションを担当しているらしく、お洒落でイケメンだった。若くて陽気なトシキは奇想天外な連載を話し出した。

「シマジさん、Pen誌上でバーマンになってくれませんか。シングルモルトに纏わる物語を入れながら、毎回、新しいお客が架空のバー『サロン・ド・シマジ』にやってきて、バーマンのシマジさんと語り合うという企画を閃いたのです。いかがでしょうか」

「面白いねえ! おれは常々バーマンになりたくて仕方なかったんだ。しかもバーチャルなバーのカウンターにおれが立つんだね。グラスも洗うことはないし、お金の出し入れもない。これはバーの理想郷だ。すぐやろう」

と、わたしは二つ返事でトシキの才能に乗った。じつはわたしはここ数年の間に、価格暴騰のためワインを卒業してシングルモルトに淫していた。すでに百本以上のボトルが部屋のなかに林立していた。

連載は、実際にいままでここに遊びにきてくれた著名人たちのことを思い出して書いたものもあれば、完全に創作したものもある。そうこうしているうちに担当がトシキからアンドウに代わった。アンドウは寡黙ではあるが、なかなか腰の据わった優秀な編集者であった。ところが三ヵ月が経ったころ、アンドウがニューズウィーク日本版編集部に異動になった。再びトシキに戻った。

連載中、一本一本心を込めてボトルを撮影してくれたウダガワ・ジュンに敬意を表する。

その間、トシキはわたしと離れがたく、シングルモルトのボトリングを信濃屋バイヤーのキタカジとコラボして〝サロン・ド・シマジ〞の冠で発売することを思いついた。ファーストリリースはイチローズ・モルト25年であった。あっという間に完売し、うまみを覚えたトシキは、今度はわたしを連れてスコットランドまで飛んだ。グレンファークラス32年ポート・パイプも飛ぶように売れた。出版社が酒を売るなんて前代未聞のことであろう。物書きがシングルモルトをボトリングするのもこれまた前代未聞のことである。読者もわたしも驚いた。

そのうち藤巻幸夫の紹介で三越伊勢丹ホールディングスの大西洋社長にお会いした。

「シマジさん、サロン・ド・シマジというセレクトショップにバーを併設してメンズ館に出していただけませんか。そこで〝シマジ文化〞を売っていただきたいのです」

このときも大西社長の情熱に乗って二つ返事で決めた。

そんなわけで本書の後半は本当のバーの物語である。バーのカウンターには笑いがあり涙があり人生がある。しかもわたしはお客さまたちに断りもなく勝手に書いたのである。それはこの小さなバーだけでは勿体ない素敵な話であったからだ。

またこの書を上梓するにあたり、はじめて会った書籍担当のモリタもスグレモノの編集者であった。なにせすべてのタイトルをわたしに墨を摩らせて筆で書かせたのだから。

末尾になって不本意だが、隠れシングルモルト・ラバーのタモリさんが書いてくださった温かいオビの惹句にはこころから脱帽し感謝している。

エッセイスト&バーマン 島地勝彦

目次

はじめに
シングルモルトを育む、孤高の島へ。

01 わたしが淫するシングルモルトには素敵な悪魔が棲む
02 いい女をシャワーも浴びさせず服を着たまま抱くな
03 小泉教授がかの文豪を思い出させた夜
04 若ければ無理が利く、やる気があれば空だって飛べる
05 徳大寺有恒さんはジャガーをジャギュアと呼んだ
06 ショートパンツは男にとって最高のお洒落である
07 あの夜仰ぎ見た星のあざやかさはなんだったのか
08 退屈な天国より愉しい地獄に逝きたい
09 美女とならたとえ幽霊でも寝てみたい
10 血を流さないで敗北した国は歴史上から姿を消す
11 末期の水には赤坂の「カナユニ」のマティーニがいい
12 遡ること五年前、あの小沢一郎さんと邂逅した
13 ジョン・レノンはニューヨークを心から愛していた
14 誰もいない夜は鍾愛するチャーチルの名演説に酔う
15 男は死にざまが重要だ、もしものときはジュラをかけてやる
16 明るい夜からは文化も恋も生まれんものや
17 愛に満ちたモルトで東北帰りの自衛隊員と少女に献杯した
18 俗世も紅茶もはみ出し者がいるから面白いワケで
19 どじょうのリーダーのために死にたくはない
20 騙されたと思ってこの魔法の器で飲んでみてくれ
21 「明日はいらない、今夜が欲しい」と熱き男は言った
22 告白しよう、モルトの薀蓄は実は彼に教わった
23 肥土伊知郎さんはロマンティックな愚者である
24 シバレン先生、今大僧正、開高先生の墓参をすればいい
25 じか当たりで築いた男の友情は男女の仲より固い
26 高熱に冒されても怪物ドン小西は悠々と葉巻を吸った
27 茂登山長市郎さんは日本の誇るべき美の怪物である
28 原発エネルギーの知る悲しみは大罪である
29 我がバーが定める加水の掟はこの水が支えている
30 物書きの醍醐味は知らない人がファンになってくれることだ
31 ラフロイグの愛すべき秘密を知っているか
32 コーヒーハンター川島良彰は強運の男である
33 カワイイ酒乱は人生の最強の武器になる
34 サロン・ド・シマジが新宿伊勢丹にオープンした
35 冴えたジョークは人生における立派な教養である
36 最強の交渉人、高橋治之がバナナシュートを日本に広めた
37 わたしにとって何よりも大切なのは出会いである
38 いい本を読めば人生は捨てたものではないとわかる
39 万年筆を知らない大人はまだ子どもである
40 山宮聞こえるか、お前の娘さんは立派な医者になった
41 文豪北方謙三は美しき妖刀でマスターを斬った
42 上質なパンツを知る悲しみは知らない悲しみより格が上である
43 まずはラベルに魅せられ味で痺れる
44 わたしにとってドモリは武器である
45 三途の川から戻ってきた夜の銀座の男
46 蒸留所は死せどシングルモルトは生き続ける
47 話が大きくなってきた、男の人生はこうこなくちゃ
48 謎に満ちた剃髪の常連客、その正体とは
49 熱狂的な信奉者へ積年の相棒を〝永久貸与〝する
50 思いもかけない物々交換が成立した夜
51 モルトの引力に誘われてきたのはあの自然科学者だった
52 新たな生命の誕生を祝う命名の儀
53 理解して別れ、仕事の相棒であり続ける元夫婦の物語
54 挙式で笑わせ別れに涙する稀代の花魁
55 生の肌身に直接着るシャツの質感は男のお洒落の醍醐味である
56 脳髄を揺らす報道写真に酔いしれる午後
57 お見合い界に粲然と輝く三百五十回の金字塔
58 お見合いの達人は知的クレームの匠でもあった
59 シマジに会いに毎月来日するフランスの貴公子がいる
60 〝空耳英語〝は耳で憶えたリアルな英語だ
61 ヒモこそが文化を育てる素敵な男である
62 忘れられないカレンスキンクのタラの風味
63 〝天才〝に大学教育は無用である
64 架空のバーが現実となり、そしてシェイカーを振り続ける
65 藤田嗣治は女に翻弄された人生だった
66 たかじんは謎を残したままこの世を去った
67 再び夢中になった知的で面白い古谷三敏の漫画
68 顔立ちに頼っていては最後まで幸せな人生は送れない
69 人生の成功には逆張りの勇気が必要である
70 H・G・ウェルズは文豪であり性豪であった
71 本当の悪党は携帯を持たないと彼は言った
72 人生で大切なのは素敵な出会いと自己投資である
73 謎の人物が同じフロアに店を開いた
74 やっぱり人生は恐ろしい冗談の連続である

聖地スペイサイドの小さな蒸留所を訪ねて。

略歴

島地勝彦
Katsuhiko Shimaji


1941年、東京・奥沢に生まれる。4 歳で岩手県一関市に疎開し、一関第一高等学校を卒業。青山学院大学卒業後、集英社に入社。「週刊プレイボーイ」に配属され、1983年に同誌編集長に就任、100万部雑誌に育て上げる。その後、「PLAYBOY 日本版」「Bart」の編集長を歴任し、取締役を経て、集英社インターナショナルの代表取締役に。2008 年に退任後、作家・エッセイストに転向する。

『甘い生活』『知る悲しみ』『アカの他人の七光り』(いずれも講談社)、『迷ったら、二つとも買え!』(朝日新聞出版)、『男と女は誤解して愛し合い理解して別れる』『毒蛇は急がない』(ともに日経BP社)など著書多数。シングルモルトとシガーをこよなく愛し、伊勢丹新宿店メンズ館でセレクトショップ「サロン・ド・シマジ」をプロデュース。週末には同店内のバーでバーマンとしてシェイカーを振っている。
ブックデザイン/松田行正+日向麻梨子
写真/宇田川 淳
校正/鷗来堂