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オーケストラ・モデル 多様な個性から組織の調和を創るマネジメント

オーケストラ・モデル
クリスティアン・ガンシュ 著
シドラ房子 訳
  • 書籍:¥1,700(税別)
  • 四六判・並製/272ページ
  • ISBN978-4-484-14106-0 C0034
  • 2014.06発行

強烈な個性をもつ音楽家たちの集団=オーケストラでは、摩擦や緊張は日常茶飯事。だが、いざ本番となれば全員が心を一つにする。リーダーたる指揮者は、どのようにして彼らをまとめるのか。指揮者にして経営コンサルタントの著者が説く、オーケストラ式チーム理論。

書籍

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内容

明確な役割とヒエラルキー、
揺るぎないリーダーシップ、
全員が同じゴールを追う意識。

強烈な個性をもつ音楽家たちの集団=オーケストラでは、摩擦や緊張は日常茶飯事。だが、いざ本番となれば、リーダーの指揮のもと、全員が心を一つにして同じ目標へ向かって全力を尽くす。なぜ、企業ではそれができないのか。なぜ、彼らにはそれができるのか。リーダーたる指揮者は、どのようにして彼らをまとめ上げているのか。

演奏家として指揮者として、複雑なオーケストラ組織を知り尽くし、プロデューサー、経営コンサルタントとしてビジネス現場でも活躍する著者が説く、オーケストラ式チーム理論。

「はじめに」より 
交響楽団では、きわめて個人主義色の濃い教育を受けたトップクラスの音楽家百人近くが、毎日狭い空間で活動する。このような労働環境では、当然のことながら摩擦が生じやすい。つまりオーケストラの世界では緊張は日常茶飯事。だが、このような困難な状況にもかかわらず、重要な瞬間には全員が一つになって最高の能力を発揮する。そして、一人ひとりのメンバーが他の全メンバーのために力を尽くす。成功するためには一致団結するしかないことが意識に組み込まれている。

書評

――ロルフ・ドベリ(『なぜ、間違えたのか?』著者)

経営に関するハウツー本といえば、教師ぶって上から教えようとするものが圧倒的に多いのだが、この本はそうではない。それが新鮮な喜びだった。

著者クリスティアン・ガンシュは、オーケストラの日常業務をいきいきと描写しながら、自分のやり方を反省して、いろいろな方法を試す方向に読者を導く。著者は一流の音楽家、指揮者としてヨーロッパ諸国で長年にわたって活躍した。その経験を活かして、多くの著者仲間よりもはるかにビジネス界の現実に肉迫している。

オーケストラには、リーダーシップについて学べることが本当にたくさんある。この手のハウツー本が次から次へと出される時代にあって、珠玉の著書といえるだろう。経営管理についての誤った考え方を、ガンシュが打ち崩してゆくのは小気味がよい。ステージに立って指揮するかのように、読者を情熱的に導く。彼が重視するのは、チームワーク、真の実力、インスピレーションといったテーマだ。

彼の描くオーケストラの日常業務はとにかく面白い。そして、そこに彼なりの論証をはめ込んでいく。

実業家にしろ、経営者にしろ、企業内のリーダーにしろ、リーダーシップやコミュニケーションをこれまでとはまったく異なる観点から見たいという人に、ぜひ読んでもらいたい本だ。

目次

はじめに

 
1 オーケストラという「企業」
 
オーケストラの第一印象
ソロから交響曲へ
明確なヒエラルキー
各メンバーの責任
リーダーによってスタイルが決まる
チームの規模
時代とともに変化するもの
企業の関心事と社員の権利
オーケストラの採用方法
部門によるタイプの違い
プレッシャーと緊張

 
2 個人からチームへ

オーケストラのグループ力学
現在の技術レベル vs 長年の経験
部門の枠を超えた解決方法
共感と反感
調和よりも敬意が大切
挑発は組織の生命力を活発にする
ルーティンは停滞を生む
変化を嫌うのは誰か?
能力とコンセンサス
決定権には境界線を引く


3 理想のチームワーク

平等はありえない
責任は人をやる気にさせる
チームワークとはメンバーの相互作用
チームワーク能力を要求することによる悪影響
相互作用のためには率直さが必要
チームの緊張は会社全体の足を引っ張る
新しいことに踏み出す勇気


4 指揮者のマネジメント術

指揮者の役割とは
調和のとれたものだけが共有される
部門間の対立を避けるために
反対や抵抗への対処法
真の実力の5条件
部下に自由を与える
成功のためのモデルなどない
相性が合わないこともある
誤りを認める


5 インスピレーション、そしてイノベーション
 
意思によるコントロールと成り行き任せ
イノベーションを妨げるもの
変化によって現状を維持する
感情と客観性
 

訳者あとがき
音楽用語辞典

はじめに(抜粋)

 ビジネスにおける議論では、何かというとインスピレーション、ヴィジョン、創造性を持てといったスローガンが前面に押し出される。そして、これらをイノベーションに導くための勇気、情熱、意欲が必要だ、とオピニオンリーダーはしつこいくらいに繰り返す。グローバル化した市場で競合に太刀打ちするためには、変化を積極的に受け入れる心構えと、個人および企業によるきわめて柔軟な対応が条件だ、と熱心に説く。
 
 こうした成功の要素を実現するためには、意識を変えなければならない。本書ではオーケストラという組織におけるコミュニケーションを例にとって、どのような意識が必要かを説明するつもりだ。そして、組織全体の統一性と個人の多様性は共存できることを示したい。関係者全員をいわば「画一化」することによって全体の調和が生まれるという考え方は、人間の性質を否定しているため、組織を誤った方向に導く。
 メンバー全員がオーケストラの響きに織り込まれている。そこで力を持つのはスローガンではなく、メンバー同士の相互作用と社会的関係に対する率直さなのだ。
 
 現代では、優れた指導原理を唱えれば、それらを実行に移す方法を示さなくても、経営とマネジメントについての権威と仰がれる。だが、最も重要なのは実現することにある。どれほど立派な言葉を並べても、明白な実現方法を示さなければ意味がない。そのことを手に取るようにはっきりと見せてくれるのが、複雑きわまりない組織であるオーケストラなのだ。
 
 オーケストラ特有のこうした相互作用は、組織全体の成功のための基本条件だ。交響楽団では、きわめて個人主義色の濃い教育を受けたトップクラスの音楽家百人近くが、毎日狭い空間で活動する。息を抜くために自室にしばらく引き籠ることもできない。このような労働環境では、当然のことながら摩擦が生じやすい。つまりオーケストラの世界では緊張は日常茶飯事、しかも狭い空間でメンバー同士が常に近接しているため、顕微鏡で見るかのようにくっきりと浮き彫りになる。だが、このような困難な状況にもかかわらず、重要な瞬間には全員が一つになって最高の能力を発揮する。そして、一人ひとりのメンバーが他の全メンバーのために力を尽くす。成功するためには一致団結するしかないことが意識に組み込まれている。
 
 当然のことながら、全員が同じ曲を演奏する。オーケストラの右半分がモーツァルトを演奏し、左半分がブラームスを演奏するなんて想像もできない。だが、楽譜は音符を印刷した紙でしかない。響きもしなければ、ましてそこに演奏会が含まれていて、聴衆つまり「顧客」を説得するわけでもない。
 企業においても計画や戦略が存在する。そして、楽譜にしろ計画にしろ、最良の形で実現されなくてはならない。
 
 うまく機能しているオーケストラは、クリエイティブかつオープンな企業といえるかもしれない。だから機敏に反応できる。一流のオーケストラは世界中から集まったトップクラスの音楽家で構成され、リーダーの方針と問題解決のための戦略を持つ活発な組織でなくてはならない。それが成功の前提だ。本書を読み進めば、オーケストラの構造は一般企業の構造と驚くほど類似していることが明らかになる。演奏会を訪れて客席から見れば、オーケストラという組織は一昔前のものという印象を受けるかもしれないが、実はそうではない。
 
 外部から見るオーケストラの姿は、実際の内部構造や複雑で緊迫した仕事の進行とはかけ離れている。それが顕著なのはリハーサルで、これを通してオーケストラは最良のチームとなる。そして、構想を実現させるこのオーケストラ的戦略こそが、組織についてのいくつかの洞察を完全に新しい観点から見せてくれる。チーム形成やコミュニケーションといった領域でも、オーケストラのモデルは理解しやすい。
 
 オーケストラでは多種多様な性格の人々、さまざまな楽器や異なる響きが合わさって、美しい響きの統一性が生まれる。問題はその方法だが、「統一性」といっても個性の違いを均して同一化したり、アイディアやヴィジョンをメンバーが少しずつ持ち寄って妥協したりといったことではない。そのような職場環境では、革新をもたらすべき創造性はかろうじて露命をつなぐ状態となり、さらには完全に阻害されることもある。
  
 経営者が飛びつきそうな真の成功モデル一つを紹介するのが私の狙いなのではない。現代人は明確なマニュアルをもてはやすが、成功をもたらす持続的な効果があるとは私には思えない。なぜなら、その内容を実行に移すのは、さまざまな性質を持つ千差万別なタイプの人々なのに、そのことに対応していないものがほとんどだからである。
 
 本書を通して、私は「オーケストラの意識」を描写したい。それは、単にルールに従うことではない。
 
 私が本書で説明する、オーケストラ組織におけるプロセスと成功戦略は、企業組織にそのまま置き換えることができるだろう。思考のヒントとなる例もたくさん盛り込んだ。音楽界発のこうしたモデルのおかげで、問題領域について厳しく率直に話し合い、さまざまな解決法を探索するチャンスが得られた。自由に想像力をはたらかせて、あなた自身の結論を出してほしい。

略歴

[著者]
クリスティアン・ガンシュ Christian Gansch
1960年、オーストリア生まれ。指揮者としてイギリスBBC交響楽団、ドイツ交響楽団、ロシア・ナショナル管弦楽団、NHK交響楽団など、多くの国際的管弦楽団でタクトをとる。81〜90年はミュンヘン交響楽団の主席指揮者。またドイツ・グラモフォンの音楽プロデューサーとして、ピエール・ブレーズやクラウディオ・アバド、アンナ・ネトレプコ、庄司紗矢香など世界的アーティストと190枚以上のCDを制作し、4度のグラミー賞ほか数々の賞を受賞。2003年、音楽とビジネスという2つの世界で培った経験をもとに、経営コンサルタントとしての活動を開始。ヨーロッパやアメリカの多くの大企業に、オーケストラにおけるコミュニケーションとメンバーのもつ独特の意識を、企業構造に生かす方法を説いている。講演やセミナー活動も積極的に行い、本書のほかに2冊の著書がある。

[訳者]
シドラ房子 しどら・ふさこ
新潟県生まれ。武蔵野音楽大学卒業。翻訳家。主な訳書に『愛する家族がガンになったら』(講談社)、『名もなきアフリカの地で』(愛育社)、『運命には法則がある、幸福にはルールがある』『ヌードルの文化史』(柏書房)、『縮みゆく記憶』『絵画鑑定家』(武田ランダムハウスジャパン)、『その一言が歴史を変えた』『元ドイツ情報局員が明かす 心に入り込む技術』『元ドイツ情報局員が明かす 心を見透かす技術』(阪急コミュニケーションズ)などがある。
●装丁/岡本健+