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クラウドストーミング 組織外の力をフルに活用したアイディアのつくり方

クラウドストーミング
ショーン・エイブラハムソン/ピーター・ライダー/バスティアン・ウンターベルグ 共著
須川綾子 訳
  • 書籍:¥1,800(税別)
  • 電子書籍:¥1,440(税別)
  • 四六判・並製/304ページ
  • ISBN 978-4-484-14102-2 C0034
  • 2014.01発行
多彩な才能をもった不特定多数をネットワーク化し、あらゆる問いに対して「アイディアを生み出す」方法を「クラウドストーミング」と呼ぶ。組織の枠を越え、コミュニティやオンライン空間を舞台に創造性を高めるチーム作り、知財戦略の手法までを網羅。

書籍

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電子書籍

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内容

【クラウドソーシング×ブレインストーミング】

200社のプロジェクトと10万人のクリエーターを結びつけてきた方法とは? 中小企業から「フォーチュン500」に名を連ねる企業までが応用できる、問題解決のための新しいしくみを≪クラウドストーミング≫という。レゴのオンラインプラットフォーム「クウソウ」、スターバックス「ベターカップ・チャレンジ」、GE「エコマジネーション」、P&G、GAP・・・・・・など、クラウドストーミングを利用した企業の事例も豊富に掲載。

●クラウドストーミングの構想を実行に移すための最適なツールとは
●最良のアイディアを引きだすために参加者に適切な問いを投げる
●外部の人材と働くことを懸念する内部スタッフへの対処法
●参加者の努力に対して適正な報酬を提供するには
●外部の才能を利用するにあたり問題となる法的障害を乗り切るには
●結果を評価し、最良のアイディアを選ぶには

目次

イントロダクション

第一章 まずはコンテクストから
第二章 知的財産、機密保持、ブランド
第三章 適切な問いを投げかける
第四章 意欲を高める公正なインセンティブ
第五章 パートナーシップを構築する
第六章 最良の人材を採用する
第七章 優れた結果を得るためのコミュニティ管理
第八章 参加者の貢献度を測る
第九章 膨大な数のアイディアを手なずける
第十章 最適なオンライン空間を構築する
第十一章 さらに先へ

謝辞

イントロダクション

 アレックス・オズボーンはアイディアを大切にしていた。彼が創立したBBDO社が世界有数の先進的な広告代理店に成長したのは、その卓越した発想法によるところが大きい。一九四八年、『創造力を生かす注1』を著したオズボーンは、斬新なアイディアやイノベーションを創造する秘訣を解き明かしている。
「いかにして創造的なチームをつくるか」と題する章では、チームのメンバーから多数のアイディアを引きだす手法が紹介されている。オズボーンはこれを「ブレインストーミング」と名づけ、BBDOが優れたアイディアをつぎつぎと具現化する組織へと成長した様子を明らかにした。同社を成功に導いたのはまさにそうしたアイディアだ。数十年を経た現在でも、ブレインストーミングは広く実践されている。マーケティングに関する斬新な切り口を得るにはどうすればいいか。技術的問題を解決するにはどうすべきか。新規の契約を獲得する名案はないか。業界や分野にかかわらず、あなたも実際にブレインストーミングを経験したことがあるだろう。
 オズボーンによって開発されたブレインストーミングの手法は多くの研究や批評の対象となり、その過程で進化してきた。例えば、フィードバックを募るタイミングに関して、オズボーンはしばらく時間をおくべきだと考えていた│誰もがいったんはすべてのアイディアを偏見なく受け止める時間が必要だからだ。その一方で、活発に意見を交わしたほうがより質の高いアイディアが生まれることを示す研究もある。また、オズボーンは集団でアイディアを生みだすことの重要性を強調したが、他人と話し合う前に各人がそれぞれアイディアをまとめたほうが望ましい結果につながるという調査報告もある。
 オズボーンはさらに、もうひとつ重要な着想を得ていた。当時、それはブレインストーミングほど容易に実践できるものではなかったが、彼はブレインストーミングの議論に続いて「大規模なアイディアの提案」について論じている。組織が全社員からアイディアを受け入れるプロセスを解き明かしているのだ。そこでは、第二次世界大戦中にアメリカの生産現場で発達し、その効果が広く認められた「提案システム」に基づき、BBDOがブレインストーミングを次の段階へと導こうとする様子が述べられている。彼は数百人の社員が提案システムを利用し、社内のあらゆるところから最良のアイディアを獲得する方法を確立したのである。
 オズボーンがブレインストーミングを世に知らしめてから半世紀後、インターネットの普及に伴い大規模なアイディアの収集は格段に容易になった。Eメールは昔ながらの提案箱に取って代わった。そして現在、アイディアの収集や評価の仕事を飛躍的に効率化する多数のツールが開発され、オズボーンのひらめきから発展した思考法はさらに進化しようとしている。業界を問わず、さまざまな組織が不特定多数の人々のアイディアを活用し始めている。オンライン上の群クラウド衆は大きな組織の内部のメンバーであることも珍しくないが、外部からの参加者であることのほうが多い。これまで、クラウドは協力してさまざまな事柄に取り組んできた。新製品のデザイン、サービスの改善、新たな販売キャンペーン、環境に優しい居住空間の創造│そのほかさまざまな分野で数多くのことを成し遂げている。いわば、きわめて大きなスケールでのブレインストーミングだ。
 私たちはこれを「クラウドストーミング」と呼ぶことにする。
 クラウドストーミングを成功させるには、従来のブレインストーミングと同じく、アイディアを募集し、評価するプロセスを最適化する術を知る必要がある。もちろん、さらなる検討を要する側面は多々あるが、本書ではクラウドストーミングを機能させる最良の方法について私たちが知っていることを伝えたいと思っている。これから提示するアプローチは、マーケティング、事業戦略、研究開発、デザイン開発、建設設計などさまざまな分野において、私たちが実際に二〇〇以上のプロジェクトに携わり、世界各国から集まった一〇万人以上の参加者と協力してきた経験に基づいている。また、それ以外にも数百のプロジェクトの推移を研究し、プロジェクトの責任者たちと意見を交換してきた。さらに、急速に研究が進んでいるクラウドストーミングの周辺領域(社会科学や人間とコンピュータの相互反応など)からも多くの洞察を得ている。
 組織が外部の才能と協力することでイノベーションを達成する例としてはさまざまなケースが考えられる。
・フォーチュン五〇〇に名を連ねるような企業は、製品ラインの変更や新製品の市場投入にあたり、本書で述べる手法を活用できる。
・中小企業は、クラウドストーミングをとおして、国際的な人材市場へのアクセスを格段に高めることができる。
・政府機関や非営利団体は、広範な社会問題に注意を喚起し、変革を主導するためにクラウドストーミングを利用できる。
・コンサルティングファームや広告代理店などの専門家集団は、外部のアイディアによって組織の能力を補完し、世界中の専門家たちをより効率的に結びつけることができる。・大学が仮想スタジオ環境【訳注:実写とコンピュータ・グラフィックによる背景画像を合成して、ニュースやメッセージの配信を行うシステム】の導入を検討している場合も、本書の内容を応用できる│ウェブサイト上に仮想スタジオを設置し、誰もがそれを閲覧し、意見を投稿できるようにするのだ。
 クラウドストーミングの効果を明らかにするため、本書では消費財のスタートアップ企業からエネルギー市場で主導権を握る国際企業にいたるまで、さまざまな組織をケーススタディの題材としている。
 
本書の読み方
 外部の人材との協働によって何が得られるか。それを初めて検討する読者には、第一章から順に読み進めることを推奨する。第一章では近年みられる共同消費のトレンドにまで視野を広げ、外部の人材を活用した組織運営のあり方を概観する。まずは、外部の人材、クラウド、コミュニティの有益性を説明する。それから、クラウドを活用した事業プロセスの応用範囲が急速に拡大するなかで、クラウドストーミングの手法がどのような分野においてとりわけ功を奏するか検討する。
 クラウドソーシング、オープンイノベーション、共創、またはマス・コラボレーションを取り込んだ環境で仕事をした経験のある読者に対しては、改めてこういったビジネス環境の有益性を強調する必要はないかもしれない。そのような読者には、クラウドストーミングのライフサイクルを段階を追って分析し、クラウドストーミングを用いたプロジェクトを計画、組織し、実行するための最良のアプローチを解き明かす。
 図I・1は、クラウドストーミングを用いたプロジェクトが計画から組織づくり、実行、再考へと至る過程を示している。ただし、ここで断っておくが、プロジェクトの実際の進行順序とは異なり、オンライン空間の
選定に関する議論は第十章で行う。オンライン・プラットフォームに関する技術や付随する権利関係については、クラウドストーミングを支えるすべての要素を理解してから論じるのが適切であると考えたからだ。大まかに言って、各章で考察する問題は次のとおりである。
・クラウドストーミングの利益と法律上の問題、機密保持、ブランド戦略の均衡点をどこに求めるか。
・参加者に対してどのような問いを投げかけるべきか。
・いかにして参加を促し、どのような報酬を提供するか。
・優れた成果に結びつくパートナーシップのあり方はどのようなものか。
・最良の人材を招き入れるにはどうすればよいか。
・参加者をどのように組織すれば望ましい結果が得られるか。
・どのような尺度をもって成果を評価すべきか。
・コミュニティを管理し、方向づけをする秘訣は何か。
・プロジェクトを技術的に支援するツールにはどのようなものがあるか。
・本書で網羅する議論の先には何が待ち受けているか。
 私たちはクラウドストーミングの可能性に大きな魅力を感じているが、私たちが何よりも望むのは本書を読んだ皆さんがこのプロセスを実践して有意義な成果をあげることだ。そこで各章では、私たち自身の見解に加え、学術的な研究やインタビューなども盛り込んでいる。また、いずれの章でも具体例を交え、それぞれの概念が明確に伝わるよう努めている。

それでは、始めよう
 私たちは組織がクラウドストーミングを実行する際に必要な暗号をすべて解読したと請け合うことはできない。私たちにできるのは、あなたに外部の才能を利用してイノベーションを達成するための明快で実用的な手段を伝え、あなたがそれを実践できるよう手助けすることだ。外部の力を利用するシステムに関する可能性を模索する術について考えることは、アイディアを生みだし、イノベーションを達成し、問題を解決するうえで役に立つにちがいない。
 私たちはアイディアを何よりも重視している。だが、アイディアを行動に移すことがそれにも増して大切だと信じている。それでは、始めよう。

略歴

[著者]

ショーン・エイブラハムソン
Shaun Abrahamson
ムトポ社を創業し、ニューヨークを拠点に、群クラウド衆の知恵を活用してクライアント企業を成功に導くコンサルティング事業を推進。マサチューセッツ工科大学(CADラボ)にて修士号、ベルリン・スクール・オブ・クリエイティブ・リーダーシップにてMBAを取得。

ピーター・ライダー
Peter Ryder
デロイト、CSC、アクセンチュアにてITコンサルタントを務めたのち企業投資家に転身。バスティアンとともに、ベルリンを本拠地として、イノベーションを支援するプラットフォーム企業、ヨヴォト社を創業。テキサス州ライス大学にて文学博士号取得。
 
バスティアン・ウンターベルグ
Bastian Unterberg
ヨヴォトの共同創業者、CEOとして同社を指揮する。2007年以来、ヨヴォトは世界各国の企業や非営利組織と10万人以上の人材とを結びつけ、オンライン上の共創モデルを進化させている。ベルリン芸術大学にて修士号取得(デジタル・コミュニケーション論)。

[訳者]
 
須川綾子(すがわ・あやこ)
東京外国語大学外国語学部英米語学科卒業。訳書に『メソッド革命 世界で最もイノベーティブな洗剤会社』、『レジリエンス 復活力』(ともにダイヤモンド社)、『競争優位で勝つ統計学』(河出書房新社)などがある。

●校閲/円水社
●本文デザイン/相京厚史(next door design)
●カバーデザイン/大岡喜直(next door design)